コンサルタントコラム
Voice 90 学びなおしとピボット
医療費や国の借金の増大、平均寿命の延びから、財政的に厳しい日本では(年金受給開始が遅くなり)働く期間が延長されています。弊社の人材紹介事業部でご支援する転職者の平均年齢も年々高くなり、40代・50代の転職は一般化し、60代の転職も増えています。
不健康なのに「お金のために仕方なく働く」のは大変苦しいですが、心身ともに健康で、いくつになっても自分のやりたい仕事ができるのであれば、良い社会の変化だとも捉えられます。
「定年を65歳や70歳に延ばし、魅力的に見せる」という考えの社長が増えていますが、現状では「60歳定年、雇用延長で65歳まで嘱託契約」という制度の会社が多く、60代の転職は「正社員」ではなく嘱託契約や業務委託契約が中心となります。
こういった環境下で60歳を超えても社会に求められるには、得意分野で「自ら手を動かせること」が近道です。
マネジメントをする人材はすでに社内にいるため、「手を動かすのは若手で、自分はマネジメントをしたい」という方よりも、「役職にはこだわらず、手を動かしてくれる人が欲しい」という企業ニーズに応えられる方のほうが活躍の場が広がります。定年を迎える前に現場感を取り戻しておくことはとても重要です。
(社外取締役や常勤監査役のご支援実績も増えていますが、有名上場企業の社長経験者を求める企業が多く、狭き門となっています。)
定年までまだ10年・15年ある方々に意識していただきたいのは「学びなおしとピボット」です。(ピボット=バスケットボールで、軸足を残し、もう片足で方向転換すること)
40代・50代は若い頃のようにがむしゃらにならなくても仕事が回る世代です。自身の専門領域を持っている方が多くなりますが、ひとつの専門領域だけに満足せず、学びなおしてピボットする、つまり本業を軸足として残しながらできることを増やしていく。
具体的には現職で他の部署の仕事に関与する、手弁当で友人の会社を手伝う、ボランティアをするなど、インプットだけでなく、なんらかの行動を起こすことが未来につながる新たな一歩となります。
このときのスキル戦略として、「他人が簡単にはできないこと」を狙うのもひとつですが、個人的には「つい無意識にやってしまうこと」や「自分が楽しめること」を第一に考えることをこの世代にはおすすめしたいです。
きれいごとのように聞こえますが、仕事人生の後半では、ゆったりとした自然体の自分で、好きなことに熱量を持って取り組むことができると幸福度が増します。「どうやったらお金にならない自分の興味を仕事に繋げられるか?」を考えて行動すること自体が楽しみになるはずです。
「今やっている仕事以外に、趣味もなく興味もない」人もいるかもしれませんが、そんな人でも無意識に、呼吸をするようにやっていることが必ず何かあると思います。
40代・50代は一度立ち止まって、自分の内面の声をじっくりと聴いてみることが大切です。
ひとりでも多く「長生きできて幸せ」という方が増え、そのような方々のお手伝いができればと思っています。