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コンサルタントコラム

Voice 108 社会課題解決目的の新規事業提案がもたらす意義と効果とは何か? – 片原 和明

近年、企業内で「社会課題の解決を目的とした新規事業提案制度」を導入する動きが広がっています。しかし、これに対して「結局、素人目線の理想論に過ぎず、収益性のある事業にはならないのではないか?」といった懐疑的な声を、経営層からいただくことも少なくありません。

確かに、ベンチャー志向の強い人材が最初から大企業に多く在籍しているわけではありません。ただし、そういった社員たちも決して無関心なわけではなく、社会の矛盾や困っている人々の存在に敏感で、「何とかしたい」という善意や問題意識を持っています。日々の業務に追われる中で、そうした思いが表に出る機会がないだけなのです。

新規事業は、最初から完成度の高いプランで始まることは稀です。実際の成功事例を振り返れば、最初は荒削りだったアイデアが、試行錯誤と修正を繰り返すことで実現に至っています。重要なのは「自分ごと」としてその社会課題に取り組み、粘り強く挑戦し続ける姿勢です。

このプロセスを支えるには、経営陣・起案者・インキュベーターの三者が一体となる体制づくりが不可欠です。経営陣は短期的な成果を求めすぎず、むしろ未来の可能性に投資する姿勢が求められます。加えて、起案者に対して伴走し、ときに叱咤激励しながら支援するインキュベーター(メンター)の存在も非常に重要です。

このような社内風土が整えば、社員の内に秘めた想いが形となり、社会に貢献する新たな事業が生まれます。そしてそのプロセスを経た人材は、社会変化を先取りし未来を切り拓く、次世代の経営人材へと成長していきます。

飛びぬけた起業家資質のある人材をないものねだりするのではなく、自社に内在する社会課題を強く認識する志ある人材にこのような機会を提供することが企業の未来の成長エンジンを作ることにもつながると思います。

こうした仕組みを持つ企業が増えていくことは、日本の経済や国際競争力の強化にとって大きな意味を持つと確信しています。

エグゼクティブコンサルタント
片原 和明