コンサルタントコラム
Voice 105 レフェリーと審判 – 土屋孝一郎
少し前の日経新聞のスポーツ欄のコラムに、ラグビーの審判は試合中、選手に積極的に話しかけて反則が起こらないように選手を導き、ゲームをマネジメントしている。それが素晴らしいという記事があった。
これについて、知人のラグビー好きはこういった。
“レフェリーと審判はそもそも違うんです。〇か✖かをジャッジをするのが審判。レフェリーは試合がスムーズに進行するようにマネジメントする役割を担うんです。辞書にはレフェリー=審判とか書かれていますが、違います笑。”
企業のマネージャー、管理職、リーダーは正に、チームや組織の目標を設定し、健全に成長し、成果を上げられるようにマネジメントすることが役割の“レフェリー”であるべきだと思うが、実際にはルールに合っているかを裁定する審判の域を出ない管理職が多いかもしれない。
評価や査定といった場面では「ジャッジ・審判」が本質です。しかし、常にそれではチームの士気を下げたり、成長の機会を逃してしまうリスクがあります。審判としての役割が必要な場面ももちろんありますが、長期的な成果を目指すリーダーにとって重要なのは、チーム全体が自律的に動ける環境を整え、目的達成に向かってスムーズに進むよう支援することです。
ラグビーのレフェリーのように、選手に反則を指摘する前に適切な声かけを行い、問題を未然に防ぐ姿勢は、職場のリーダーにも通じるものがあります。メンバーが迷いや不安を感じる前に助言を与えたり、目標に向かうためのヒントを与えることで、チーム全体がポジティブに動くきっかけを作るのです。
これを実践するためには、まずリーダー自身が「結果」ではなく「プロセス」に目を向ける必要があります。業績目標が未達であったとしても、メンバーがどのような努力をしたのか、どんな課題に直面したのかを見逃さずに把握することが大切です。そこで得た学びを次にどう活かすかを共に考える時間を持つことで、単なるジャッジを超えた価値が生まれます。
さらに、レフェリーとしてのマネジメントは、メンバーの主体性を引き出す点でも効果的です。試合中のレフェリーが選手に「こう動け」とまでは命令しないように、職場でもリーダーが過度に細かく指示を出すのは避けるべきです。その代わり、目標を共有し、必要なスキルやリソースを提供することで、メンバーが自ら最善の行動を選べるよう支援するのが理想的です。
一方で、レフェリーには公平さと毅然とした態度が求められることも事実です。組織の中では、時には厳しい決断を下さなければならない場面もあります。たとえば、メンバー間で意見の対立が起きた際には、公平に話を聞き、最も適切な方向性を示すことが必要です。この「レフェリー的公平性」は、チーム内の信頼を築く基盤になります。
最後に、リーダーがレフェリーとしての役割を果たすためには、メンバーとの日常的なコミュニケーションが欠かせません。ラグビーの試合が絶え間ない対話と観察の上に成り立つように、職場でも定期的な1on1やフィードバックの場を設けることで、信頼関係を深め、適切なマネジメントが可能になります。
レフェリーと審判の違いを理解し、リーダーとして「マネジメントすること」と「ジャッジすること」を使い分けることで、チームのパフォーマンスを最大化することができるでしょう。あなたは、レフェリーとしての役割を意識していますか?それとも審判としてのジャッジに偏っていませんか?ぜひ、一度自分のリーダーシップスタイルを振り返ってみてください。
※ちなみに、私もラグビーの現役プレーヤーです。転職相談したい方、ただ雑談したい方、お気軽にご連絡ください。