コンサルタントコラム
Voice 10 達人を見た
先日、某百貨店の地下食料品売場のパン屋ですばらしく仕事振りの良いレジスタッフを見た。50歳代の女性だが、まさに達人の領域である。
この店は人気のパン屋で2台あるレジは常に客の列が絶えない。中には10品以上のパンを買って行く客もある。ご存知のようにパン屋はトレーで好きなパンをとりレジで会計を済ます方式で、ひとつひとつの商品にはバーコードやラベルなどなく、レジでは商品の形をみて金額を打ち込まなければならない。つまり全ての商品の形と価格を記憶しておかねばならない。
さらに、レジではひとつひとつのパンを種類に応じて別々に袋に入れ、中には焼きたての暖かいパンや、解けやすいチョコレートコーティングされたパンは、一緒にせず手提げ袋を分けて包装してお客に渡さねばならない。
土曜日の夕方、地下食品売り場は夕食の買物をする客で大変混んでおり、このパン屋も大繁盛でおそらく一日で一番忙しい時間帯なのではないかと思われた。
この非常に忙しいさなか、女性はこの複雑で忙しい作業を常に笑顔で、あわてることなく流れるような動きで対応している。親子連れの客がいれば、子供に声をかけて笑顔で「バイバイ」と手を振って見送り、そのすぐ後の客には「大変お待たせしました」とゆとりの笑顔をふりまく。
その動きには無駄や迷いが一切なく極めて自然で、一挙一動すべてに長年積み重ねた経験と客に対しての気遣いと仕事対しての思いがにじみ出てくるのを感じさせる仕事振りだった。仕事の達人を見た気がした。
レジ列に並びながらこの方の仕事振りに見入ってしまい、気がついたら思わずレジ横の商品を1つとってトレーに乗せて余計に買物をしていた。