コンサルタントコラム
Voice 63 組織として挑む
企業における新規事業の取り組みは、最近ますます熱を帯びて参りました。
新規事業開発プロジェクトチームの組成、社内提案制度の推進、CVCの立ち上げやアクセラレートプログラムの運営など、ニュースを目にしない日は無い、というほどです。
私が新規事業創造のお手伝いを続けていて、最近少し気になることがあります。
新規事業には、それを実際に考える起案者と、「やる/やらない」などを判断する決裁者(多くはその企業の経営者)が存在するわけですが、その両者の溝が深くなっているような気がするのです。
言ってみれば、「あなた(=起案者)考える人、わたし(=決裁者)評価する人」とでもいうような、起案者が孤軍奮闘している割には、決裁者は冷めている、という関係です。
これは、私が起案者に伴走する立場ゆえの、偏った印象であることは重々承知しているのですが、そんな関係に起因する困り事を、良く聞くようになりました。
多くの企業が、それこそ真剣に新規事業に取り組むが故に、決裁者は数多くのアイデアを聞き、評価して判断しなければならなくなっているのでしょう。
アイデアの多くは残念ながらすぐに興味をそそるものでもありませんし、実際に上手くいくことは稀ですから、どうしても冷めた目で見るようになってしまうのかもしれません。
しかし、新規事業とは本来、その会社では誰も経験したことがないチャレンジであるはずです。
一見面白くないアイデアが、実は成功するかもしれないし、当然その逆もあり、本質的には、その会社の人たち全てにとって「やってみないとわからない」ことなのです。
だとすれば、その新規事業に関わる全ての人が、同列の立場でアイデアと向き合い、顧客は本当にそれを求めているのか、実現することは可能なのかといった、本質的な議論を、当事者意識を持って進めていくことが、本当は大事なのではないでしょうか?
「あなた(=起案者)考える人、わたし(=決裁者)評価する人」といった、対立構造を社内に作るのではなく、未知のチャレンジに対して、全員が同じ方向を向いて挑んでいく、そういった組織こそが、不確実な時代にイノベーションを起こせるものと信じます。
企業が一丸となって、未知の領域にチャレンジしていく、そのお手伝いが出来ればと、我々は切に願っています。