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Voice 79 福島県民の心意気に見る新規事業成功の要諦

先日、私はコロナの影響下、県を越えて訪れることに躊躇しながらも、来年創業55周年記念を迎える「スパリゾートハワイアンズ」を初めて訪問した。

正直、行く前は、「ハワイに何度も訪れているが、あの風と空気と海のさわやかさ、ハワイの人々のおおらかな雰囲気を日本の福島で再現ができるわけがない。所詮は映画の中でのお話しなのだろう。」と鷹を括っていたのが本音でした。

しかしながら、現地のドーム直結のホテルに着いた途端に「なんだこれは!!」と感動の連続でした。

フロントの対応から部屋まで案内もスタッフのホスピタリティの高さは海外の高級ホテルの接客レベルに比して、決して見劣りしませんでした。

むしろ売店のベテラン60代スタッフが明るく優しい眼差しで気軽に「アロハ!」と声をかけてくれるし、若手~ベテラン、正社員だけでなく、パート・契約社員に至るまでそのDNAは深く浸透しているのだと確信しました。

ハワイで鑑賞した、どのハワイアン・タヒチアンダンスよりも、遥かにレベルの高いダンスショーを間近で見たときに、この本物感は何なのだろうと感動し、思わず「常磐ハワイアンンセンター創業50年史」を手に取り一気に読み切ってしまいました。

思えば同施設の存在する「いわき市」は福島県でも海側近くのにあり、震災の折にも地震・津波の影響だけでなく原発風評にもさらされ、地元の産業は大打撃を受けたことは記憶に新しいです。

知人の地元ということもあり、少しばかりの応援の意味で一度は訪問したいと思っていたのが、今回このような「新規事業の成功例・レガシーを体験できるとは!!」

過去を紐解けば、同施設には,朝鮮戦争の時代に石炭が黒いダイヤともてはやされ、石炭特需に隆盛を極めた歴史がありました。同時に「1tの石炭を掘るのに40tのお湯を掻き出さなければならない」という特殊な岩盤事情(豊富な湯源)があり、落盤事故や爆発事故も頻発し、その犠牲になった人々が数多くいたとのことです。

この特需が戦乱状況の沈静化と石油へのニーズ転換が進み、10年の時を経て斜陽化していく中、当時の常磐炭鉱(株)中村豊副社長が考案し、炭鉱の従業員とその家族を受け入れ、尚且つ、それまで多数の事故の原因だった豊富な源泉を生かして、「年中、常夏のリゾート」を実現したのが現在の「スパリゾートハワイアンズ」です。

プールのバリエーションの豊富さ、温泉施設のゆったりした造作、和洋中料理の味、接客サービスの質の高さ、素朴な中にも「おもてなしの心」が通っていて、決してマニュアル教育ではできないレベルの高さと同時に心地良さを感じました。

そのせいなのか、老若男女、親子3代での来場客の多さも特徴でした。きっと最初は完全な素人からのスタートだったのでしょうが、福島県民の我慢強さや誠実さが蓄積され、この施設の中には満ちているのだと感動した次第です。

新規事業も最初は皆素人です。しかしながら誰かがやらなければ企業の明日はない。こんな中で火中の栗を拾い、プロの先人の技を徹底的に真似ることから、やがて現在の「感動レベルのオリジナルサービス」ができ上がっていくのだと思います。

事業を起こす人は自分のためだけでなく、「世のため会社のためを思って心血を注ぐ覚悟をすること」が必要です。

一方で会社の経営陣もオリジナルレベルの次世代の屋台骨となる新規事業は10年~20年かけて育てり上げるものであり、決して効率を追ってできるものではない」ということに対して腹を括ることが重要だと思います。その挑戦枠としての予算と権限をしっかり委ね、次世代幹部候補者の覚悟の程を見極めることこそ現経営陣の役割だと確信します。

一人でも多くの経営者が生み出され、次世代につながる強い事業が育つことこそが日本の未来を支えるものと確信いたします。そんな一助になれれば本望と思う今日この頃です。

取締役 エグゼクティブコンサルタント
片原 和明