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GC株式会社 代表取締役 渡辺 泰治 氏
コロナ禍の2020年7月、システム開発のスピードと高い品質に定評があるGC株式会社の社長に就任された渡辺氏に同社の現在と未来をお話頂きました。(https://www.grandchallenge.co.jp/)
GC株式会社
代表取締役 渡辺 泰治 氏
1976年生。広島県出身。 東京都立大在学中にエンジニアとしての仕事を開始し、その後、大手IT企業での新規事業開発、コンビニのIT子会社での事業部長を経て、外食産業の戦略IT子会社で代表取締役に就任。 2020年に現在の企業に参画し代表取締役に就任。
インターウォーズ株式会社
インタビュアー 小黒 力也
理系大学院修了後、国内系シンクタンクに入社し、金融機関向けのシステム開発に従事。ヘッドハンティング業界に転じ、IT部門のマネージャを経て、現職。
目次
SB、楽天、ファミマ、ゼンショーで立ち上げた新規事業の数々
小黒 力也(以下、小黒):社長就任おめでとうございます。
本日は宜しくお願いいたします。まずは渡辺さんのこれまでのご経歴を伺えますか。
渡辺 泰治 氏(以下、渡辺):2001年にソフトバンクグループの現社名SBテクノロジーにSEとして入り、システム開発、新規サービス立ち上げ、投資系に携わってきました。中でもYahoo! BBの立ち上げに参加したのは非常に強烈な経験です。孫さんや当時の社長室の方から脳がちぎれるほど考えろと叩き込まれました。自らの意思でしっかり考えて発信すれば賛同してくれる方が多いということや、結果を出すことにこだわり抜くことを学びました。 楽天に移ってからはサービスのプロデューサーとしてIDやポイントを担当しました。私が中心になり立ち上げたサービスもあります。自分でやりたいと手を挙げたクーポンサービスでは景品やお金の流れを徹底的に研究しました。これはその後の私のキャリアに繋がっています。
ネットだけでなくコンビニやスーパーなどのリアル店舗で楽天のポイントを使えるサービスを中心になって立ち上げた経験も、今の私の大きな根幹になっています。 楽天では前例のないところから1つずつ積み上げて形を作っていくことが自分の性に合っていることに気づかせて頂きました。
2015年に楽天を離れて、1つの会社を経由し、その後ファミリーマートの子会社で事業部長をしました。コンビニのデジタルマーケティングやクーポンビジネス、後は店舗を広告媒体として販売するビジネスを担当しました。その中でもネットとリアルを繋ぐ役割をやらせて頂き、リアルの小売店にしっかり関われたので、非常に学びが多かったですね。
2018年からはゼンショーの電子マネー発行子会社の社長に就任しました。決済ビジネスの難しさを実感し、就任時メインだった決済ビジネスから撤退を判断しました。ソフトバンクで撤退は早いほうが良いということを学んでいたので、良い決断ができたのではないかと思っています。
その後、自分の得意分野でもある共通ポイントをゼンショーグループの店に入れることに関わりました。楽天さん、ドコモさん、ポンタさんの3ブランドを入れるのは業界初で、レストラン業界日本No.1のゼンショーグループにふさわしい動きができたのではと考えています。今年4月からは弊社にジョインし、8月に社長就任したというのが、ざっくりとしたキャリアです。
小黒:ありがとうございます。これまで新規事業としてはどのくらい手掛けてこられたのでしょうか?
渡辺:新規事業は首を突っ込んだり、主体でやったりのを全て合わせると10以上の立ち上げに関わってきました。撤退戦も7つあります。自分がメインで張っていて撤退したものもありますし、引き継いで撤退したものもあります。
小黒:撤退は早い方が良いというお話もありましたが、立ち上げと撤退の経験を複数積まれている方はそう多くないと思います。楽天さんの時は特許も複数取得されたそうですね。
渡辺:私個人の特許というよりも、発明者としてです。やはり新しいビジネスやサービスを考えていくと、こういう仕組みができるかなというアイデアが数多く出てきます。楽天では特許申請に対する支援体制が非常に充実していたので、特許取得や発明に繋がりやすかったと思います。
元楽天同僚との信頼感の中で第二創業期を担うことに
小黒:いろんな選択肢があったと思うのですが、なぜGCに参画を決められたのでしょうか。
渡辺:前社長の袁(エン)は楽天の同僚で、一緒に色々なプロジェクトを担当した経験から信頼関係がありました。
今の事業だけではなく、新しくサービスを作って広げたいし、大会社の中でのチャレンジは色々してきたので、小さいところからどこまでできるかにもこだわりました。信頼とチャレンジで選んだということでしょうか。
小黒:入ってみてどのように感じていますか?
渡辺:GCは設立5年目ですが、きちんと稼働し始めてからはまだ3年目です。開発スピードが速いというお客様の評価は聞いていたのですが、本当にそうでした。これは我々の特長としてアピールできるところです。また社員が真面目でピュアで非常に気持ちの良い会社ですね。
小黒:渡辺さんが社長に就任されて、創業者の袁さんは取締役になられましたが、渡辺さんと袁さんの役割分担はどのようにされていますか。
渡辺:会社の経営の部分と新規事業関係、営業を私が、袁は、開発のプロジェクトをガンガン進めていくリード役という形で役割分担をしています。袁は大株主でもあります。
小黒:御社の今の事業内容は、コンサル、システム開発、運用支援、品質保証などですが、他社との違いや強みはどういうところでしょうか。
渡辺:大手のネット系企業や自社サービスを持つ大手メーカーに対するシステム開発の支援がメインです。システム開発そのものや、開発してできてきたもののQA(品質の確認)を担い、一部は要件定義から行っています。
弊社はまだ30数名の規模ですが、国内、海外のパートナーを含めると、月間120〜150人くらいで動いています。コミュニケーションもスムーズで、開発スピードが速いことで評価を頂いていますね。今メインのスタッフは中国と台湾出身の方が多く、皆非常にアグレッシブです。コンピュータサイエンス系の大学や大学院を出ていて、ITに対してレベルの高いところまでしっかりとした知識体系を持っているメンバーが揃っているので、技術力は高いと考えています。
小黒:開発スピードが圧倒的に速いのは、技術力の高さのなせる技でしょうか。
渡辺:それに加え、非常にアグレッシブなことも理由ですね。仕様が決まる前から作り始めてしまう。若干の手戻りはありますが、そこを恐れて手を止めない。作って、見ながら修正し、戻していく。ただ手戻りが発生しすぎるので、要件は早めに固めようとしています。
小黒:クライアントとの契約形態は請負、準委任など、どのような形ですか。
渡辺:契約はほぼ準委任ですね。特に我々のお客様はサービスを提供しているので、お客様自身も契約の時点で要件が決まっていなかったり、その時点では決まっていても途中で変わることはよくあります。そういうニーズの変化に柔軟に対応するために、準委任になっています。
小黒:請負だとリスクも高いということでしょうか。
渡辺:請負だとどうしても要件を固めて頂く必要がありますが、準委任の場合、どんどん変わっていく要件に対し、我々のチーム自体が開発業務という形で受けられますので要件が決まっていなくても対応できるメリットがあります。
小黒:一般的には請負ではない派遣や準委任だと社員の技術力があまり付かないのではないか、面白い仕事ができないのではないかと感じる方もいると思うのですが、いかがでしょうか。
渡辺:いわゆるSESの負の部分としてあるとは思うのですが、弊社は窓口の人間が中心になり、密にお客様の要件を聞きながら進めているので、関わりを深めることやレベルアップを絶えず求められています。また大きなプロジェクトに関しては統括管理チームを作り、そこにCTOやQAのスペシャリストを置き、案件ごとのレベルアップや技術的な課題解決を色々な側面から支援しています。バラバラで動くのではなく、チームとして会社全体で案件にジョインする状況です。
社名変更に込める変化とチャレンジへの想い
小黒:旧社名はiPandaでしたが、会社自体は日本で登記されている日本の会社ですね?
渡辺:もちろんです。iPandaは中国の方々が多い会社だったのでその名がフィットすると考えていました。 ただここからのステージはもっと日本のメンバーにもジョインしてもらってどんどん広げたいので、どこかの国のイメージが入るより、我々の姿勢を示す社名にしたかった。自らもチャレンジし、チャレンジする人たちもサポートしたいという思いで、グランドチャレンジというキーワードを設定し、その略称のGCとなりました。短いと言いやすいというのもあります。
社員成長と顧客満足、SESから自社サービスの先に見ていることは
小黒:今後事業を伸ばす上で課題に感じられることはありますか。
渡辺:SESというか、開発支援のサービスだけでなく、自社サービスも立ち上げたいと思っています。ずっと誰かのサービスの支援をし続けると、自分たちのサービスも見てみたくなりますし、そうすると支援する立場と見え方が違ってきたりもするので。 両方を経験しながらレベルアップする体制が、エンジニアにとってもお客様にとってもハッピーな形だと思います。プロとしてサービスやシステム開発を支援するのと、自分ごととして自分のサービスを立ち上げる、その両方を兼ね備えると最強になれるのではないでしょうか。
小黒:自分たち自身がサービサーになると、目線も当然変わりますね。
渡辺:そうですね。ただ自分たち自身がサービス提供者になると、実は新しいことへのチャレンジに制約がすごく出てきます。
常に新しいものを作り続けるわけにはいかなくなります。運用が大事になる部分も少なからずあるので、お客様に開発支援を提供することで、その技術的フィードバックをこちらのプロジェクトにも適用できればシナジーが出てくると前社長の袁とも話しています。
小黒:新規事業に関わる方は、クライアントワークをしながらプロジェクトで関わるのか、専任の人を増やしていくのか、どのようになりそうですか。
渡辺:基本的には専任体制を取ってローテーションを回すと思いますが、一部のポジションや役割の人間は両方を見ることになると思います。社員でも興味を持つ人は多いと思います。 既に企画や準備が始まっていて、そのためのチームを作り、横断で動ける体制を作っているところです。
小黒:どんなビジネス領域に対するサービスなのか、お伺いできる範囲で教えていただけますか。
渡辺:大きく2つのカテゴリーを考えています。開発支援をしている会社ですので、「こういうツールがあったら良いね」というニーズは結構持っています。世の中にないそんなツールを自分達で作ろうというのが1つで、今は必要な開発期間について話をしています。結局、自分たちが必要なものは他の人たちも必要なのではないかと思います。
今の時代は共通技術の上で動いているので、困っている箇所も共通だと思います。もう1つは、元々私が強みとしていたポイントやクーポン。その中でいくつか企画を立てています。
小黒:中国の社員の方が多く中国の会社のパートナーもあるということで、ビジネスの領域として中国をイメージされているのか、日本でのビジネスを伸ばそうとされるのか、そこはいかがでしょうか。
渡辺:対中国は一部既にやっていますが、そんなに大きなサイズではありません。国内国外にこだわるわけではありませんが、アウトプットは国内の方が出しやすい状況ですので、今はそこにフォーカスしています。
小黒:渡辺さんは今後会社をどのようにしていきたいとお考えでしょうか。
渡辺:今の時点では、この位のサイズにならなければ、という考えはありません。お客様から良い会社だと評価してもらえる会社になりたい、エンジニアや関わるメンバーが成長できる会社になりたい、その結果サイズが大きくなればそれが一番ハッピーだと思っています。とはいえ自社サービスを立ち上げて、世間一般の人に多少名前を知ってもらえる会社にはなりたいですね。 これからの時代、働き方もどんどん変わってきますし、個人と会社の関わり方にもいろんなパターンが出てくると思います。社員にとって自由度が高く、ここだといろんなチャレンジができる、自分たちも成長できるという会社にはしたいと思っています。
小黒:まさにGrand Challengeですね。
渡辺:そうですね。みんなにとっての成長の場にできて、かつそこでしっかりとお客様に喜んでもらえる、そんな会社になれば自ずとサイズアップも含めて進んでいくと思っています。
日中バイリンガルが集うオフィス
小黒:今いらっしゃる社員の方々の構成について教えていただけますか。
渡辺:今のところ日本人が1割、もうすぐ2割になります。8割以上が中国、台湾の方です。他の国の方も少しいらっしゃいますが、我々のコミュニケーションは全て日本語でできています。中国の方同士は中国語で話したりしていますけれど。
小黒:日本語はみなさん不自由ないということですね。
渡辺:基本的には日本語は話せます。日本語が得意ではない方は英語がきちんと話せるので、意思疎通が取れない状況ではありません。
小黒:世代や男女比はどうですか。
渡辺:女性比率が比較的高く、4割くらいが女性です。年齢層は50代が1名、40代が4、5名。それ以外は30代が多く、20代の方も若干います。半分くらいは既婚者ですね。ご夫婦で働いている方もいらっしゃいます。奥さんが入って、旦那さんを誘い入社されたご夫婦もいらっしゃいます。とても優秀です。
小黒:一番身近な人を招き入れるのは良い会社の証拠ですね。
渡辺:社長に就任してから社員全員とone on oneのインタビューをしましたが、その時にみんなが口を揃えて言うのは、会社の雰囲気が良いということでした。
国をまたいだリモートワークも、広がる働き方の多様性
小黒:コロナ禍でリモートワークが広まっていますが、御社はいかがですか。
渡辺:クライアントニーズに合わせてリモートと出社を分けていますが、基本はリモートにしています。 出勤の場合も時間で密にならないように調整しています。
小黒:リモートの仕事が進むと地方の方の採用もありますか。
渡辺:それは是非ともしていきたいと思っています。
小黒:日本全国、場合によっては海外ということもありますね。
渡辺:基本的にリモートで8割以上仕事ができると認識しています。パートナーも海外にありますので、すでにその働き方は始まっていると感じています。
小黒:採用場所がワールドワイドに広がっていきますね。
渡辺:そうですね、ですから1回も直接会わずに、という話も夢ではないと思いつつも、実際はどう進めていくかが今後の課題ではないかと思います。
小黒:今、採用のステップはどのようにされていますか。
渡辺:若い方はカジュアル面談の上、正式面接を1段階か2段階ですので、最低2段階です。場合によってはエンジニアリードのCTOなどの面接を入れて進める形になっています。
小黒:選考の中で、渡辺さんが特に意識されるのはどういうところでしょうか。
渡辺:やはりアウトプットを出せる方ですね。実績もそうですし、アウトプットを出すことへのこだわりを持てるかどうかというところを重要視しています。
小黒:今後、来て欲しい方、そうではない方というとどうお考えですか。
渡辺:うちの会社に合う・合わないという観点ですと、しっかり自分の意思を表現できる人が合うのではないかと思っています。
現状、海外の方が多いので、きちんと自分の立場や考えを表現しさえすれば、すごく理解してくれるし、ではどうしようという観点で考えてくれます。彼ら自身も自分がこうしたいとちゃんと言えるので、そういうコミュニケーションができる人が合っていると思います。相手に察してくださいというのはかなりハードルが高いと思います。日本人的なあうんの呼吸のような方は苦労されると思います。
小黒:新卒採用はお考えになりますか。
渡辺:まだ我々の状況では手を出すべきではないと思っています。特に日本の新卒はいわゆるベーシック教育を準備しなくてはならず、そこはまだ体制が取れていないので。
チャレンジとアウトプットで60歳以上にも活躍の場を
小黒:定年に関してはいかがですか。
渡辺:会社のルールは60歳定年で65歳まで延長、それ以降も延長可能になっています。 個人的な経験も踏まえると、65歳以上でもすごくパフォーマンスを出される方々もいらっしゃいますので、その方のモチベーションと会社が必要としているスキルセットがマッチするのであれば、いつまででもと思っています。
うちのような会社や業種業態に関しては、特殊性もあると思うので、今後広げてはいきたいものの、どれだけ人材の方でマッチできるかは気になるところですね。
小黒:60歳以上だと、どんな経験の方なら来ていただきたいですか。
渡辺:年齢というよりも、新規サービスの立ち上げをお任せできる方、一緒にやっていただける方を募集しています。
小黒:新規サービスの立ち上げは、プログラミングではなく、枠組みを作るということですね。
渡辺:はい、事業の立ち上げですね。もちろんネット関連の事業立ち上げとなりますが多くの知恵と経験を持たれている方に参加頂きたいと考えています。
小黒:いわゆるITコンサルタントやPMでも、シニアの方の採用を考えられますか。
渡辺:その分野は、スピードや技術的な観点、体力的にもかなりハードルが高いところですがチャレンジをお待ちしています。現状で求めているのは、PMにしても、完全にプロジェクトの真ん中に入り、旗を振り、スケジュールを切って課題の調整をして、それらをお客様と一緒に目線を合わせながら細かく進められる人です。
小黒:社員で副業をされている方はいらっしゃいますか。
渡辺:数名います。会社として全てをOKとしているわけではないのですが、特定のメンバーに関してはOKとしています。
小黒:最後に、今後御社を志望される方へのアドバイスをいただけますか。
渡辺:弊社を選ぶ方は、やはりチャレンジをされる方なのではないかと思います。入社後も色々とチャレンジする機会がありますので、そこに対して前向きな方が、弊社が望んでいる方々です。
もう一つ加えると、プロフェッショナルになりたいという強い気持ちを持っている方々に参加して頂きたいと思っています。
プロの条件とはアウトプットにこだわる、結果にこだわる、そのこだわりを持てるか、持っているかということだと思っています。しっかりプロとしてアウトプットにこだわり、いろんなチャレンジをしていただく、それによって皆さんの素晴らしい成長の場や環境が作れれば良いなと思っています。
小黒:本日はありがとうございました。
長年SESをやった後、何となくいつかは自社サービスをと考えて失敗するシステム開発会社の話を多く聞きますが、GC社は社長自ら新規事業開発経験が豊富で、システムの開発現場を熟知しています。
顧客満足だけを追い求め、社員成長がおざなりになる会社も多いですが、しっかりと社員の成長を考えながら戦略を練っているというのがとても印象的でした。今後のGC社の成長に協力させて頂きます!