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株式会社スタメン 代表取締役社長 加藤 厚史 氏
組織と働く社員を活性化させ、エンゲージメント経営を実践し、企業や組織の生産性向上を促すコンサルティングサービスと言う独自の視点でサービス「TUNAG」を提供している株式会社スタメン。今回は、同社で代表取締役社長を務める加藤 厚史氏にお話をお伺いしました。
株式会社スタメン
代表取締役社長 加藤 厚史 氏
1981年生。愛知県出身。
京都大学大学院卒業後、テレビ局に入社。その後、名古屋のITベンチャーで、人事と新規事業を担当し、2010年に取締役に就任。
その後、東証マザーズ、東証一部への上場を経験。
2016年7月の期末をもって退任し、株式会社スタメンを創業。
人と組織が好きで、ITとリアル、セールスとプロダクトの複合領域で、今後も様々な事業を創っていきたいと思っている。
インターウォーズ株式会社
インタビュアー 小黒 力也
理系大学院修了後、国内系シンクタンクに入社し、金融機関向けのシステム開発に従事。ヘッドハンティング業界に転じ、IT部門のマネージャを経て、現職。
小黒 力也(以下、小黒):御社の事業内容を伺う前に、加藤さんのこれまでのご経歴を少しお伺いしたいと思います。人事、事業立ち上げ、上場の経験をされて、満を持して起業とお見受けしますが、加藤さんの人生観を決めてきたエピソードなども踏まえて、教えて頂ければと思います。
加藤 厚史 氏(以下、加藤):生まれは愛知県の田舎で、3人兄弟の3男でした。家族もみんな高卒で、特に長男が荒れていたこともあり、僕は小さい頃から早く両親のために家を買って、親を避難させたいと思っていました。それで早く家を買うためにはどうしようと思った時に、近くに競艇場があって、競艇選手は平均年収が高い事を知りました。「これしかない!」と思って目指していましたが結局、競艇選手にはなれませんでした。
その後は、せめて世間体だけでもしっかりしようと思い、大学に入り、弁護士を目指すことにしました。
「地元でも有名な荒れた家庭で育った3男が、大学に行って弁護士になった」今思えば、そんなストーリーを作ろうと思ったんですかね。
結論から言うと、こちらも大学と大学院の6年間に5回受験しましたが、受かりませんでした。学生時代は、ほとんど資格学校の自習室とい深夜早朝ノアルバイトしかしてないので、大学生活の思い出は全くないですね。。。
そんな感じで、大学院まで行ってダメだったので、縁がないものと諦めて、法律とは関係ないことをしようと、名古屋のテレビ局に就職しました。司法試験の勉強をしていた時に、テレビだけが唯一の楽しみでしたから・・・。
小黒:テレビ好きだったのですね。
加藤:そうなんです。採用面接でも当時は、「これからのデジタルとネット時代をどうする」というような、高尚な話をみんながする中で、僕は、「テレビが唯一の友達だったから受けに来ました」と言いました。2回挫折を味わった中で、ああやって採用してもらえたことを今でもすごく感謝していますし、いまだに先輩や同期と仲良くしてもらっていますね。
小黒:これまでの各プロセスでの意思決定は、ご自身の中で決められたのですか。誰かに相談されていましたか?
加藤:自分で決めてましたね。
親も大学や大学院とかは、あんまり知らなかったのもありますし、昔からなんでも好きにしたらみたいな感じの家でしたから。ちなみに、学生生活の後半は当時の金利が低かったこともあって、奨学金を目一杯借りていました。でもそこで社会の仕組みをたくさん学びましたね。実際、借り過ぎたせいで、人間貸借対照表でいうと、負債もめちゃくちゃ多いけど、資産=キャッシュもいっぱいある、みたいな変な感じになっていましたけど。
小黒:中京テレビさんには、約2年?
加藤:2年位ですね。テレビ自体が好きだったので、本当に仕事とプライベートの境目もなく、毎日すごく楽しかったです。僕は編成部という、経営企画のような部署にいたのですが、制作の現場でも営業の現場でも、みなさんがすごく可愛がってくださって、今でもなんで辞めたんでしょうかね、ってたまに思いますよ(笑)。
ただ、どこかで、2回失敗した人生なのに、このまま見える安心できる世界にいてもいいのかなとの迷いがあったのかもしれません。落ち着いてくると少しそわそわしてくるところがありますから。
そんな時に、当時ITベンチャーだったエイチームとたまたま出会って、なんとなく直感で、この会社で勝負してみたいなと思ったのです。
小黒:最初はエイチームには人事として行かれたのですね。
加藤:そうです。何の仕事をやるかも知らずに、成長性と社長の人柄で決めましたね。とりあえずうちに来なよ、となってから初めて、僕はどんな仕事をしたらいいですかね、と聞いたところ、何となく爽やかだから、人事やってみたら、という話になったんですね。
小黒:そこから、人事と新規事業の立ち上げを並行しながら役員に。
加藤:そうですね、人事も面白くてやりがいもあったのですが、せっかくベンチャーに来たし、何か売上にも貢献したいと、新規事業を企画して、立上げをやらせてもらいました。この時も、毎日が新鮮で、初めてのことばかりで楽しい毎日でした。
小黒:起業はいつぐらいから考え始められたのでしょうか。
加藤:2015年の終わりぐらいからですかね。役員として、上場も経験させてもらってから4年近くが経っていました。
入社して8年が過ぎて、僕自身は、人と組織に関することが好きだということが分かったんですね。そこで、人と組織というものをもっと追求したいなと思った時に、それを自らのリスクを持って、やりたいと思うようになってきたんです。そこからお世話になった方に色々とお話をさせてもらって、8か月後に独立をしました。
小黒:加藤さんから見て、スタメンを一緒に起業された取締役のお二人はどんな印象ですか。
加藤:単純な言葉で言うと、大西はとっても器用でいいやつです。心が綺麗だし、素直な人だなあといつも思っています。変な話ですが、「息子が大西くんみたいな感じになったらいいな」と思いますね(笑)。CTOの小林は経営の経験も長いですし、冷静で色々な視点を持っています。僕からすると信頼できてなんでも話せる相談相手という感じですね。今、経営陣でいうと6人で経営しています。
小黒:執行役員は3名ですね。
加藤:そうですね、取締役、執行役員とはそれほど区別はしていなくて、この前も6人で経営合宿をしてきました。執行役員の3人も本当に実務的にも人間的にも優秀で、僕も学ぶことが多いですね。
小黒:執行役員の喜多さん、森山さん、満沢さんは、どのタイミングでのご入社でしたか。
加藤:喜多は2017年2月です。創業し、事業を開始して半年後位ですね。管理全般を0から立ち上げて、すべて見てくれています。森山はなんだかんだ一番付き合いが長いですね。ご両親のことも知っていますから(笑)。彼には導入後のお客様とのあいだのカスタマーサクセス部門を見てもらっています。満沢は、今年(2018年)の3月ですね。僕よりもはるかにしっかりしているので、一番大きな組織であるコンサルティング部門を任せています。
小黒:皆さん、最初は一社員として入られたのでしょうか。
加藤:そうですね、私はヘッドハンティングして、いきなり上の役職からというよりも、まずは普通に入ってもらって、社内で認められて、周囲からの声も含めて、上がっていって欲しいと思っています。と言っても、この規模であれば、出来る人は1,2か月で、すぐ周囲にも分かりますしね。最初から形にこだわる人は、逆に少し自信がないのかなと思ったりしてしまいます。実際、カルチャーマッチング的にも、パフォーマンス面でも結果が出始めたら、躊躇せずに重責を任せていくというような、スタンスでやっています。
小黒:会社も成長中ですし、今後入られる方々も、上のポジションを目指せそうですね。
加藤:そうです、もちろん、今の経営体制や組織の形が、完成形だとは思っていないので、どんどん上を目指してほしいと思っています。
小黒:加藤さんの最近の1番のミッションは、何ですか。
加藤:やっぱり、採用、人事ですね。ただ、細かな判断をするというよりも、ゴルフでいうOB杭を打つような感じを心掛けています。基本的に自由にやってもらうのですが、「ここはちょっと違うよね」、「これだけは守らないとね」というのを考えながら、意思統一をしていくところですね。あと、将来で言うと、これまでの延長線上にないような仕掛けをしようと思っているので、大きな提携や新規事業の話などは、意識的に自ら動こうと思って動いていますね。
小黒:今後やっていかれたいのは、どういったところでしょうか。TUNAGを広めていくのは当然として、また違うサービスの展開もありそうですか?
加藤:そうですね。単一サービスで「株式会社TUNAG」にするつもりはありません。TUNAGという事業は、とても好きな社会的意義のある事業だと思っていますが、あくまで創業事業と考えています。 そして、年に一つ位は違う事業の種を植えていきたいなと思っています。30〜40億円規模の色々な事業がいっぱい生まれる会社にしたいですね。
小黒:その延長線上にあるのかもしれませんが、加藤さんの夢について教えて頂けますか。
加藤:世界に出ていきたいという想いがここのところずっとあります。僕は田舎育ちで、世界に出たのが遅かったので、コンプレックスと強い好奇心があるのかもしれません(笑)。ただ、なんとなく進出しました!ではなく、意義のある事業とかサービスで、しかもちゃんと収益をあげる形で、世界に出ていきたいと思っています。会議をしていても、1人はタイにいて、1人はアメリカで会議をするとか、そういう会社になっていたいなと思います。
小黒:何年後とかにという予定はありますか。
加藤:せっかちなので、一刻でも早くと思っていて、焦ってますね。いつも生き急いでいますから。
小黒:近い将来という感じですね。続いて事業についても色々教えてください。どんな企業が使われていますか?
加藤:数十名のスタートアップから大企業まで、サービス業や小売りチェーンさん、製造業、IT企業、など幅広いお客様に導入頂いています。基本的には有償で、全社導入を頂いていますが、全社導入を前提に一部門でトライアル的に使って頂く場合もあります。
小黒:エンゲージメントを高めるサービスというと、まだ一般的には馴染みが薄いかなと思うのですが、貴社のサービスをどういう風に認識するといいのでしょうか。
加藤:一言で伝えるのが難しいのですが、「社内制度を軸にしたプラットフォーム、社内SNS」なんです。社内のエンゲージメントを高めるのを、社内制度を軸に、施策を回していくというサービスです。
分かりやすい課題や理論をもとに作っておらず、経験を基にビジネスとプロダクトを作ってきたのと、社内制度というのがまた身近ではないので、説明が難しいですよね。でも一度使うと、辞めずに使い続けてくださるお客様がほとんどです。
余談ですが、僕はこれからの時代、単価をとって大きくなろうというビジネスは、「一言で説明できないサービスにしたほうがいいんじゃないか」と考えています。一言で言えないことにこそ、お金を払う価値があるといいますか、一言で言えるものはどんどんテクノロジーの進化でフリーなサービスに置き換わっていくような気がするんです。
小黒:他社から真似される、類似サービスが出てくるなどありそうですか?
加藤:真似されることや競合が寄せてくることは、もちろん機能的にはあると思います。ただ、でもそれほど美味しい領域・サービスではないので、そっとしておいてくれたら…(笑)
小黒:こんな会社にはすぐ使って欲しいなと思うのは、どんな会社でしょうか。
加藤:業種、業態問わず、やはり「人を大事にしている会社」ですね。これを使いたいという会社がどんどん増えていったらいいなと思ってますね。
小黒:事業を伸ばす上で課題はどのあたりになりそうですか。
加藤:そうですね、僕自身いつも言ってることなんですが、若いメンバー、新卒がちゃんと売れるようなサービスにするということでしょうか。
しっかりとした仕組みと組織を作り上げて、将来的にはリクルートのように、入社して初月から期待通りの売りが立つようなビジネスにしていきたいなと思ってます。
小黒:なるほど。新卒は今年から採られるのですか。
加藤:昨年からやっていますね、今年2人入って、来年も5人入ります。実は先月のトップセールスは新卒1期生の女性です。
小黒:リモートワークや副業はやられていないのですね
加藤:リモートワークは可能性が有るかと思うんですけど、副業はやってないし、まだ予定もないですね。
小黒:残業は皆さん、あんまりされていらっしゃらないのですか。
加藤:ベンチャーにしては圧倒的に少ない方じゃないかと思います。土日とかは人っ子ひとりいないので、たまにびっくりしますね、大丈夫なのかと思って(笑)
小黒:社員からすると有難いことですね。
加藤:そうですね、でもそのワークライフバランスを売りにして広報したり、そこに期待して入社してくる人は、うちみたいなベンチャーでは活躍できないかなとも思うので、これを書くこと自体も微妙かなと思っています。このあたりは難しいところですね。
小黒:生産性が高い会社というのはいいですね。
加藤:生産性は効率の話なので、むしろ僕は純粋な生産高にこだわっています。チームでやっていくために非効率なことも大事にしようね、ということと生産高があれば時間は決める必要すらないのではないかという考えです。
小黒:本社は名古屋なんですね。
加藤:私や役員は名古屋、東京、大阪を行ったり来たりしていますが、本社は名古屋です。この先も世界に出ていきたいので、ドメスティックな目線で、本社を東京にという移転はあまり考えていないですね。
小黒:例えば東京で営業採用したら、基本、東京に住んで頂くことになる?
加藤:そうです。そして、僕は昔からあんまり意に反した異動は好きではないので、基本的には本人がそこでずっとやりたいという限り、それでいいかなと思います。ただ、どんな形であれ会社も組織も拡大しているので、色々なチャンスは場所を問わず増えていくと思いますし、柔軟にその都度話し合っていけばいいのかな、と。
小黒:現状、皆さんの平均年齢は今どの位ですか。
加藤:28ぐらいですかね。家庭持ちは3割位ですので、若いわりには多い方だと思っています。名古屋に本社がある企業だからかもしれないですけれど。
小黒:自社内のエンゲージメントはどのように高めていらっしゃいますか?
加藤:社内では賞賛の文化や、何かいいことあったら鐘を鳴らそうとか色々やっています。うちが一番エンゲージメントが高くないと、ダサいよねと思って意識的にやっています。ほんとはただ、こういうことが好きなだけなんですけど・・・。
小黒:社員から出て来るんですか、それとも加藤さんから。
加藤:ようやくこの夏から、社内で委員会のようなものを作って、こういうのをやりたいとか検討しています。今月も各地で、リファラル用のウェルカムパーティをやったのですが、僕は一切タッチしていないですし、僕も一切出てませんし企画も直前で知りました(笑)。そういうのは全部みんなで考えてくれてます
小黒:いいですね。社員旅行とかは皆さん、結構はっちゃける感じですか。それともしっとり大人な感じですか。
加藤:どっちかというと、ぼくが暗いので(笑)。案外しっとりしています。あんまりイケイケじゃないです。
小黒:採用ステップはどのようにされていますか?
加藤:基本は各所属長が決めていて、僕は最終だけ出ます。面接は2〜3回位ですね。東京、大阪、名古屋、各地で対応しています。
小黒:採用のハードルはかなり高いんと思うのですが、選考の上でこれは譲れないのは、どのへんで見ることが多いですか。
加藤:やはりカルチャーマッチングですね。「カルチャーマッチング」、「スキル」、「伸びしろ」の3つを考えた時に、明確にカルチャーマッチングを優先しようと決めています。
小黒:どんな自社カルチャーで、どんな人は合う、合わないというのは如何でしょうか。
加藤:自分と違う職種の方が来てもちゃんとその仕事やその成果に興味を持つとか、もっと言えば会社の売上や動向に興味を持つということですね。あとはスキルアップに対して真摯に勉強するとか。例えばスタメンでは、受注した時にみんなで鐘を鳴らすんですね。その時に、手を止めて参加する。選考の時に「こういうのは本当に嫌いじゃない?」って聞きますね。「嫌いだったら辛くなるからやめた方がいいよ」って。
小黒:一番採用ニーズが高い職種は何ですか?
加藤:コンサルティングでしょうね、しっかりと数字を作れて、素直で、動ける人がいいですね。あとは人と組織が好きな人。それがカルチャーマッチングに繋がると思います。元々興味があって原体験もあると、サービスも売れるし、興味も深まるし、会社にも合うなと思います。
小黒:キャリアップですぐに転職ではなく、長く会社にいたいと思うような人の方がよいですか?
加藤:それはそうですね、やはり長く働きたいとか、一緒になって会社を作って行きたいという人に来て欲しいですね。
小黒:最後に、転職者、御社を希望される方に何かメッセージやアドバイスを戴ければと思いますが。
加藤:色々な業種の色々な経営者に会えるので、すごい経験は得られると思います!
小黒:ありがとうございました。