トップインタビュー
株式会社ローソン 代表取締役社長 新浪 剛史 氏
毎年売り上げを伸ばしているコンビニエンスストアですが、各社の出店競争が激化するなか、本部は新規店舗を増やすことで売り上げを伸ばし続けてきましたが、各加盟店の売り上げは7年連続で落ち込んでいます。
メディア、新聞等でも多々取り上げられていますが、「変革期」にあるローソンを率いる新浪社長は何を思い、考え、改革にあたっているのでしょうか。そこで、どんな人材を求めているのか改めて伺いたいと思います。
株式会社ローソン
代表取締役社長 新浪 剛史 氏
1981年 慶應義塾大学卒業後三菱商事
1991年 ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)
2000年 ローソンプロジェクト統括室長兼外食事業室長
2002年 顧問から社長
インターウォーズ株式会社
一人ひとりが人生のCEOとして生きる社会を実現する
人と企業のインキュベーター
インターウォーズ(以下、IW):まず、単刀直入に一番お聞きしたかったことから質問させて頂きます。
最近、ローソンの看板が変わると大変話題になっていますよね。看板の色を変えるという事は、30年以上かけて培ったローソンという企業イメージを一度精算して”新しい顔”にしようという風に感じているのですが、今までの伝統を打破してまで、 そこにこだわる社長のお気持ちを教えてください。
新浪 剛史 氏(以下、新浪):ローソンが「変わった」というメッセージをお客様に知っていただくことが、一番の目的です。 現在ローソンでは、3つのブランドを立ち上げました。「ナチュラルローソン」「STORE100」については、それぞれ売上も上がり、スピード感を持って進め、良い方向に進んでいます。
問題は、今迄の「ブルーのローソン」をどのように良くしていくかということだと考えているんです。
おかげ様でずっと存続して、利益を上げてきた成功モデルですから簡単に変わらないわけです。 「ナチュラルローソン」と「STORE100」の立ち上げの苦労体験、成功体験を「ブルーのローソン」を大きく変える起爆剤に していきたいと考えているんです。
IW:新浪社長は2002年5月の社長就任時から素材にこだわる「おにぎり屋」の成功や全国のローソン店内へ「郵便ポスト」を設置するなど様々な改革を実行してきたことで知られていますが、2006年改めてメディア、新聞等でローソンの行う「改革」は世間から大変注目されています。
その中で、新浪社長は現在のローソンの一番の課題は何とお考えですか。
新浪 :1兆4千億の企業を成長させるには、社長一人の考えではどうにもなりません。そのためには一人一人に考えてもらうことです。ローソンの一番の変革課題と考えているのが、社員の意識改革です。社員が自ら考えた 新商品をどう作り、売り出すかどうかも社員に考えてもらう。一人一人が考えて納得した上で、行動するプロセスが大切です。
考えるのは社員の仕事、自らで考える事のできる人材の採用、教育を課題と考えています。そのために現場と真摯に向き合い、社員、オーナーの方々のハートを動かすために生の声を聞き、課題を抽出し、鼓舞させることが私の仕事です。
IW:なるほど、それでは”考える人材”を育てるための社員教育の取り組みには、どういったものがあるのでしょうか。
新浪 :例えば、中間管理職が、現場で起こっていることを咀嚼し、いかに解決していくかや、どうやって組織の風通しを良くするかをテーマに、管理職を対象にCSセッションを行っています。1回のメンバーは、30~40人、1泊2日の合宿形式です。これまでに管理職は全員、2、3回の合宿を経験しています。
企業の成長に人材の教育は不可欠。僕は、教育とトレーニングは違うと考えています。
トレーニングは言われたことをきちっとやることであり、教育はトレーニングのベースとなるソートプロセス(思考回路) を理解すること。しっかりとした教育がなされなければトレーニングは成り立ちません。 CSセッションの効果は、すぐには表れるものではありません。ディスカッションでの”気づき”によって、約30人の受講者のうち次回までに自分が確実に進歩したと実感できた人は最初3人位しかいなかったでしょう。 しかし、それが5人になり7人になり、積み重なることで大きな変革のうねりになる。
最近は、役員のCSセッションに希望した一般社員の陪席も認めています。すると参加した一般社員が、役員が真剣にCSについて議論している姿を目の当たりにして、「ローソンは素晴らしい会社に成長する」と感激していました。(笑) そこで役員だけでなく、部長セッションにも一般社員の陪席を認めることにしたんです。
私が直接社員とコミュニケーションをとり、私が今考えていることを社員に直接伝える「ローソン大学」という場を設けているのですが、このCSセッションは、「ローソン大学」のなかのコアセッションとして、今は一般社員対象にも行っています。 まずは、何といっても「ES(従業員満足)」が重要で、「CS(顧客満足)」の前に「ES」ということで、 トップが直接社員と語り合い、そして、今考えていることを伝えていくということをしています。
IW:
改革を行うにあたっては、第一に戦略立案でも商品開発でもないのですね。それを考案する”人”の成長・・・また、ローソンの社員満足が重要だと。
“企業は人なり” 改めて実感しました。改革に”人材”は不可欠なのですね。
それでは、この「改革」の先に見るローソンの今後の展望(ビジョン)とは?
新浪 :「あ、ローソン面白いな!」と思っていただける驚きと感動を創っていきたいと思います。
今後は、「ナチュラルローソン」と「STORE100」2つの戦略フォーマットのノウハウを8300店舗を超えるレギュラーローソンに導入し、顧客層の拡大による既存のフォーマットの強化を図る、いわゆる 「ハイブリッド(融合)型ローソン」への進化を積極的に、推進していきます。 それによってより一層お客様の利便性を追求できるのではないかと考えています。
すでに大都市圏では、レギュラーローソンに「STORE100」で蓄積した生鮮食品や日配食品、お値打ち価格のPB「バリューライン」の品揃えを導入した店舗の実験を始めており、女性のお客様の増加による客数および売上高改善がみられます。
また、高齢化が進む地域では、商品や店舗レイアウトに関して、高齢者の視点に立ち、工夫を凝らした「シニアにやさしいローソン」の実験を開始しました。これらお客様のニーズに合った「イノベーション」を推進することで、マチ(地域)のお客様にとって近場で便利なコンビニエンスストアへと進化を遂げることができると確信しています。
お客様のニーズに合わせながら、地域の特性に応じて、業態をはめ込んでいこうと考えています。大きな環境変化の中で、ローソンは全国の1店1店が地域のお客様に愛される「マチのほっとステーション」に なることを目指しています。
コンビニ業界は、今、飽和状態とみていますが、中高年の方や女性のお客様に新しいサービスを提供すれば、成長の余力はまだまだあると考えています。業界で競争しあって、次々に良いサービスを出していけば市場は拡大すると思っています。潜在力は十分にあります。
IW:最後に、インタビューを見て、ローソンに益々魅力を感じた方、ローソンへ転職したい!と思っている方へ、最後に新浪社長から直接メッセージを御願いします。
新浪 :ローソンのビジョンを具現化し、未来のコンビニエンスストアの形を一緒になって考え、創って行動していただける一人でも多くの皆さんの参加をお待ちしています。
IW:本日はありがとうございました。
新浪社長の、社員の方々、オーナーの方々、一人一人の意識改革と成長、そして何より社員満足が改革には絶対に欠かせないんだというお言葉がとても印象に残りました。
全国をまわり、オーナーの方々と向かい合い、直接対話する事で徹底的にお互いを分かり合おうとする新浪社長。 人と人の関係を本当に大事にするこんな方だからこそこれだけの企業をひっぱっていけるのではないでしょうか。
大改革中のローソン、これからの展望がますます楽しみです。