トップインタビュー
株式会社クリムゾン 代表取締役社長 児玉 俊明 氏
カジュアルのアパレル企業である「株式会社クリムゾン」の児玉社長にお願いしました。
「PIKO」「Town & Country」「RUSS-K」などサーフ系カジュアルを中心に数々のブランドを展開するアパレル企業です。中国からの直接物流など卸事業の効率化の強化をされる一方で、2003年秋より本格的にSPA(製造小売業)の業態に進出し、更に2006年秋からはモダンアミューズメントブランドでの出店を加速化されております。
株式会社クリムゾン
代表取締役社長 児玉 俊明 氏
1980年 日本油脂株式会社
1986年 児玉被服株式会社(現株式会社コダマコーポレーション)
1992年 同社代表取締役社長
2002年 株式会社クリムゾン 顧問
2002年 同社取締役副社長
2002年 同社代表取締役社長
2006年 パイオニアトレーディング社代表取締役社長
インターウォーズ株式会社
一人ひとりが人生のCEOとして生きる社会を実現する
人と企業のインキュベーター
インターウォーズ(以下、IW):まずはじめに、アパレル業界全体の現在の環境をどのようにお感じになられているかお聞きしたいのですが。
児玉 俊彦 氏(以下、児玉):はい。これからの日本は少子化により衣料全体の”販売数量”が大きく伸びるとは考えづらいと思います。よってアパレルとして人口減少の影響を受けるであろう他の業界同様、今後のマーケットを楽観視しているわけではありません。
しかしながら消費者は、たとえばデートのときの服には高品質なトレンド性のある商品を選び、普段着には低価格でベーシックなのものを買うなど、使い分けが上手にできるように変化してきました。以前は気に入ったブランドであればアイテムを問わずに買って行く方もいましたが、今ではTPOSに応じたお金の使い方ができるように、消費行動が成熟してきたといえるでしょう。そういう意味でどの分野にターゲットを絞ってアパレルとしてビジネスを展開するかが大きなポイントとなってきていると思います。
もう一つ、従来ファッションは国内市場のみのビジネスでしたが、グローバル化で日本の企業も海外に進出するなど、全世界を対象としたビジネスになってきています。国内市場は自分のポジションをしっかり確保する戦略をとる一方、これからは世界に目を向けて世界市場での戦略を考えるビジネスになってきています。
IW:どのターゲットを狙うかが重要とのことですが、御社はどの顧客層を狙っているのでしょうか。
児玉 :特定のターゲット、つまり年齢、性別、所得層というセグメントではなくブランドによってライフスタイルを提案しています。当社は、サーファーブランド、モード系、レディース系などいくつかのブランドがあり、ブランドを柱にビジネスをしています。それぞれのブランドイメージをあげることを目指し、ブランドを柱にアパレル(衣料)・雑貨などの商品群を構成しています。実際に販売するのはアパレル(衣料)ですが、当社の訴求していきたいのはアパレルを通したブランドイメージです。
IW:では御社はアパレル商品の販売を通してブランドイメージの構築をしていると考えてよいのでしょうか。
児玉 :はい、そうです。
IW:この業界での御社のライバル企業、または意識している企業はありますか。
児玉 :ライバルは特に意識していません。アパレルは自動車のトヨタと日産のように会社対会社でシェア争いをする業界ではありません。
例えばAというGMSとBというSPA専門店が全面的にシェア競争をしているという訳ではありません。それぞれの企業がそれぞれ独自の提案で消費者のニーズをいかにとらえて行くかを考えています。シェア獲得というより各企業(各ブランド)が業界の中で自分のポジショニングをいかに確保するかが重要だと考えています。
卸の分野でいえば、海外の企業が日本に進出し日本向け企画を含め新しい提案を行なっています。こういった企業は完成されたサプライチェーンシステムを持ちまた店舗運営ノウハウと資本力をバックに持っています。むしろ国内企業よりは海外企業の動向に注意しているのはそのためです。
IW:他社との競争というより、いかに自社のポジションを確保するかという意味では、自社のブランドのファンをいかにつくるかが重要なのですね。ブランドのファンを獲得する為にどのような戦略をとられていますか。ロックグループの「GLAY」を起用したプロモーションを行っているのもひとつの戦略のようですが。
児玉 :商品を買って頂き、使って頂きはじめてブランドのファンとなって頂けると思います。そのために①トレンドをとらえた企画に基づき、②クオリティの高い商品を、③適正価格で、④タイミングよく店頭に並べ、⑤ブランドのイメージにあった店舗で、⑥気持ちよく購入頂くサービスを提供し、⑦使ってお客様に満足して頂く、トータルな提案が必要です。
プロモーション(広告、宣伝)だけでは店舗にお客様を呼んでくることはできますが、それがそのままお客様の満足やファンが増えることとは直結していません。そういう意味でSPA(製造小売業)方式は当社のブランドをトータルで提案できるとても有効な方法だと考えています。
当社の基幹でもある卸のビジネスはとても効率が良いのですが、外部要因に左右されやすいです。小売企業の意向、天候要因、流行などに大きく左右され、見込み生産をするためお客様の変化に柔軟な対応が難しい部分があります。先行投資などのリスクも比較的少ない反面、お客様の意向を的確に捉えて対応する部分では限界があります。SPAの手法は、店舗を持つ・在庫を持つ・店舗人材も教育も必要など卸にないノウハウが必要で、そのためにはリスクもあります。それでも尚ブランドイメージをお客様に伝えて、満足頂くためにはSPAの手法が不可欠だと判断しています。
IW:現在はSPA方式の業態作りに力を注いでいらっしゃるのですね。そのために今直面する課題と対策は何だとお考えでしょうか。
児玉 :当社はもともとアパレル卸の業態をやってきており、この卸の業態は当社の大きな柱となっています。今後もより効率化を図って強化してゆきたいと思います。一方で、ブランドによるライフスタイルをより効果的に提案してゆく手法として、もうひとつの柱として今後育ててゆきたいのがSPAの業態です。
今はSPAの仕組み作りができる人材、それも他の会社での経験をそのまま当社に導入するのではなく、クリムゾン流のSPAの仕組みを考え導入できる方と是非一緒にお仕事がしたい。今までの成功体験を当社内の環境にアジャストしながら仕組みとして作り上げてゆくことができる人材を求めています。
IW:他社にないクリムゾン流のSPAをお考えとのことですが、どのようなものでしょうか。
児玉 :ひとつはローコストのSPAです。ローコストとは価格が安い(安いものを提供する)という意味ではなく、良いものを手ごろな価格で提供するために中間コスト(オペレーションコスト)を抑えたSPAの仕組みを目指します。
もうひとつ、売る商品については提案型のSPAを目指しています。ベーシックな定番商品だけでなく、たとえばシーズンのはじめに「”pour le mieux”プーレミューというブランドの今シーズン提供する商品はこれだ」という独自性を提案できるSPAの仕組みを目指しています。
IW:求める人物像はどのような方ですか。
児玉:当社は”より熱く、より早く、より楽しく”を行動指針にしています。またアパレルの企業ではチームプレーが要求されます。これから仕組みを作るためにご自身の思いをちゃんと語れて、周りの社員を説得し、メンバーを引っ張って行ける方が良いです。
IW:会社の雰囲気を教えてください。どのような社員の方が多いですか。やはりファッションに興味があるおしゃれな方が多いのでしょうか。
児玉 :ファッション、アパレルに興味がある人は多いです。サーフィンが好きな人も多いですし、当社の社員は多方面に趣味を持っていて、自由発想の個性的な社員が多いです。センスについては個人差がありますのでなんともいえませんが…。
IW:男女比率はどうですか。
児玉 :店舗を入れると女性比率は高いですが、本社は営業の男性が多いためか6:4で男性が多いです。執行役員で1人、部長クラスで数人の女性が活躍しています。女性向けのブランドもあり、女性の感性をもっと活用して行きたいので女性社員は増やしたいと考えています。
IW:どのような経験を持っている方が御社での活躍が期待できますか。また、どのような経験の方を求めていらっしゃいますか。
児玉 :やはり、アパレル業界・小売業界の経験がある方が即戦力として期待できます。でも、ファッションに強い興味があり、意欲のある方であれば業界外の方であっても1年でキャッチアップできます。また、これから展開する店舗では、雑貨類(靴、帽子、バックなどの衣料周辺小物)を強化したいのでこのキャリアの方は歓迎します。
IW:このインタビューを読み、「クリムゾン社で働いてみたいな」と思った方も多数いらっしゃると思います。その方達へのメッセージをお願いします。
児玉 :当社は、ブランド資産というベースを持っており・卸のビジネスも堅実に進めてきましたが、これからの大きなジャンプアップのために今期は大きな変革、大きなチャレンジをしなければと考えています。その変革に共に参加して頂ける方に是非メンバーに加わって頂きたいと思います。
将来は事業部を分社化したホールディングカンパニー制も視野に入れており、権限委譲も更に行ないたいと思います。その場合、やる気のある方にはどの部署においても直ぐに部門長になって頂く機会も提供したいと考えています。当社は将来の経営幹部として会社を担ってくれる方を求めています。
IW:本日はありがとうございました。
児玉社長はとても気さくな方で長時間のインタビューにもとても丁寧にお答えくださいました。お話を伺う中で、ブランドという強みを持っており、中国製産、中国直接物流の仕組みをすでに構築しているクリムゾン社が、その得意分野を活かして現在開発している「クリムゾン流のSPA事業」はきっとアパレル業界の一つのポジションを得ることであろう、今後がとても楽しみな企業だと感じました。
SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)=製造小売業
TPOS(Time, Place, Occasion, Style)