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トップインタビュー

株式会社ぱど 代表取締役社長 倉橋 泰 氏

「情報誌ぱど」は衣食住を中心とした地域密着型の情報誌で、無料で家庭・事業所に配布されており、発行部数はなんと約1,200万部!ギネスブック認定の発行部数世界一のフリーペーパーです。そんな世界一のメディアを持つ「ぱど社」の過去・現在・未来を倉橋社長にお聞きしました。

株式会社ぱど

代表取締役社長 倉橋 泰

1975年 京都大学工学部卒業
1977年 同大学院修士課程修了後、荏原製作所に入社
1987年 個人情報を中心とした地域密着型の宅配フリーペーパー「ぱど」を企画し、社内ベンチャー事業として設立・創刊
1992年 MBO(マネージメント・バイ・アウト)により独立し、代表取締役に就任
2001年 ナスダック・ジャパン(現・ヘラクレス)市場へ上場(3月22日)
2004年 発行部数1,200万部達成
2006年 東京ヘッドクォーターを開設。合弁会社「株式会社ぱどラボ」を設立

インターフォーズ株式会社

インターウォーズ株式会社

一人ひとりが人生のCEOとして生きる社会を実現する
人と企業のインキュベーター

インターウォーズ(以下、IW起業のきっかけを教えていただけますでしょうか。

倉橋 氏(以下、倉橋):僕は荏原製作所のエンジニアだったんです。30歳の時にロサンジェルスの技術提携先に手伝いに行った時に、かわいらしい声の女性からかかってきた新聞勧誘の一本の電話が事業アイデアのきっかけです(笑)。色々ありまして、その電話から、アメリカではクーポン券欲しさに新聞を買っていることがわかったんです。もしかすると今後新聞ってなくなってしまうんじゃないかと。新聞が届かなくなるとチラシがなくなる。日本のチラシの市場を調べてみたら、相当大きい。これは「新聞販売店に代わってチラシを配布できるインフラを持っているとビッグビジネスになる」っていうのが、当時考えた発想でした。

ちょうどその時に、毎週ある情報誌がアパートに入っていて、それに興味を持ったんです。その情報誌は当時166のエリアに分けられ、約250万部配られていました。地域別に個人広告がたくさん載っていて、漠然とその時、新聞からニュースをとるとこういう感じになるのかなって思ったんです。刷り分けて配るというのがすごく新鮮に映ったんですね。もともと技術屋でしたから、パソコンでそのまま焼きつけられるようになれば、刷り分けても安くできるって直感しました。

日本には無い媒体だし、新聞の勢いはなくなっていくだろうということで、日本に戻って、新規事業をという話になったときに、会社にプレゼンしました。だから、モデルはあったんです。社長から「金を出してくれるところがあればやっていい」という話をもらって、出資者探しをして・・・。大変でしたが、結果的には荏原製作所、凸版印刷、三和銀行、第一勧業銀行、東芝などのそうそうたる企業から出資を得ることができ、社長と専務を説得して、荏原製作所の社内ベンチャー1号として事業を立ち上げることができました。

IWなるほど。もともとは、企業内起業だったのですね。倉橋社長は昔から経営を志向されていたのですか?

倉橋 :僕は割と「あまのじゃく」で、何か言われても、「それがどうした」って思ってましたから(笑)、人の言うことは聞かなかったんです。宮遣いは向かないのかなって思ってたんですよね。もともと祖父が起業して失敗していたり、父もそんな家に婿養子で入ったりで、今考えるとそういう影響もあったかもしれませんね。それと年功序列という社会がどうなのかなって。30代でもマネージャーかって思ってた部分もありました。

IW「ぱど」の名前の由来は?

倉橋 「”パー”で”ドジ”」っていう意味ではなく(笑)、個人広告の「Personal Advertisement」の頭をもじって「ぱど」としました。

IWその表記をひらがなにされたのは何故ですか?

倉橋 読者が主に主婦で、学生も読むので、温かみがほしかったんです。あと、「ぱど」って半濁音と濁音なので、商標登録が短い名前でもできたんですよね。

IW現在は、オフィス版でその月が誕生日の人向けの「バースデーマガジン」や26歳以上のOL 向けの「ラーラぱど」などターゲットをより明確にした情報誌を発行されていますよね?

倉橋 はい。実は、最初はオフィス版を出そうなんて全く考えてなかったんですよ。うちのビジョンは「情報を通じて 人と人 人と街をつなぎ 人も街も元気にする」なんです。街を元気にしたいんです。具体的に言うと、住宅地の場合の「人」は主婦です。だから、家庭版は主婦と主婦がよく行くお店を繋いでるのですが、都心は家庭版では繋げない。だから、オフィス版を配って、ビジネスマンやOLと街を繋ごうという発想ですよね。

それで、あわよくば家庭版の「ぱど」を連想してもらって相乗効果を狙いたかったんです。都心に来れば来るほど、職域と住域が重ならないし、人数も多く、いろいろな方がいるのでセグメントをしっかりしないとフィットしない。だからエッジを利かせたものが必要だと。まだまだ、都心が弱いので、この部分を強化していかなければと思っています。

IW情報誌から立ち上がってきて、現在はWebやモバイルの事業も強化しているとお聞きしていますが、今後の展開についてはどのようにお考えでしょうか?

倉橋 フックになる「ぱど」を自分たちで持っているので、自分たちの中で完結させたい。つまり、ネットやモバイルを強化したいんです。特にモバイルかな。Webの市場が大きくなればなるほど、入口勝負になってくるから、自分たちの紙媒体からモバイルへというところに力を入れていきたい。これが最重点項目と捉えています。

2つ目に、紙媒体である「ぱど」の家庭版は粛々とエリアを広げていくことです。もう少しして、新聞の市場がより小さくなっていくと、チラシの市場はサバイバルゲームになって、インフラを持っている我々は今以上に優位性をもつことができると思っています。

最後に、都心版「ぱど」はリニューアルをして戦うというものです。他のフリーペーパーと差別化し、エッジを立てた企画で攻めていきたいと考えています。

IW現在の御社の課題は何だとお考えですか?

倉橋 営業会社なので、ネット・モバイルに関しての技術がないんですよね。今、ネット・モ バイルで一対一対応できるように、社内でも一生懸命作っているのですが、そのスピー ドアップが課題ですね。うちは紙媒体の出身者が多いので、インターウォーズさんにも お願いしていますが、それができる方にご入社いただいたり、技術力のある企業をM&A したりということが急務と考えています。あと、「ぱど」のエリアを広げていくために 営業マンが必要なんですけど、彼らが入社してから一人前になるまでの成長スピードを 上げたいと思って試行錯誤しています。今、その教育プログラムを作っているのですが、それが結構難しいんです。

IW倉橋社長が経営をされていく上で大切にしていることを教えていただけますか?

倉橋 「ロマン」「ソロバン」「ジョウダン」と言っています。世の中の役に立たないと淘汰されてしまうので「ロマン」。例えば、「ぱど」が出ることによって、この街が活気づく。遠くまで買い物に行かなくても、地元にもいいところがあると気付いて、過疎化するのではなく、街を元気にしていきたい。そういう方向にもっていければいいなと思っています。次に儲からないと株式会社ではないし、給料も払えなくなってしまうので「ソロバン」。最後に、眉間にシワを寄せながら仕事をしていてもつまらないし、仕事は楽しまないとということで「ジョウダン」。この3つを大切にしています。

IW御社で求める人物像はどのような方ですか?

倉橋 まず、『「ぱど」の仕事を面白そうだと思える人』というのが、第一条件です。それと上場企業とはいえ、まだまだ小さい会社なので、「パイオニア精神、ベンチャー精神旺盛な人」、「ゲーム感覚で何事にも取り組める人」、「プラス思考の人」ですね。あと「自分は運がいいと思っている人」に来てほしい。運はうつりますから。

IW最後に、現在、転職をお考えの方へアドバイスをお願いします。

倉橋 今、一生懸命やっているということが大事なんだと思います。社長になりたいとか、一旗揚げてやりたいとか、給料が高いから会社を移るという人が結構いるんだけど、自分の欲だけで転職すると見間違えてしまうと思います。今を一生懸命やっていると、おのずと力がついて、自分からお願いして入るのではなく、来てほしいと思われますよ。キャリアを積んだ転職はいいと思いますけど、キャリアを積まない転職はまた一からになってしまいますから。それと自分の仕事が楽しめないとだめだと思いますね。

IW本日はありがとうございました。

倉橋社長は、大変サービス精神旺盛な方で、ロジカルなお話の中にも、会話の端々にユーモアを交えながら、楽しくお話をしていただきました。「ぱど」というフックになるメディア、そして、それを多くの人達に届けられるインフラという、大きな強みを持つ同社の今後がとても楽しみです。