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株式会社フォー・ユー 代表取締役社長 清水 孝浩 氏
2部上場企業で、総合リサイクル「2nd STREET」や服飾関係に特化した「JUMBLE STORE」等を全国に合計約240店舗のリサイクルショップを展開する「株式会社フォー・ユー」の清水孝浩社長です。
今後、リサイクル市場の拡大も見込まれ、ビジネスモデルの持つ社会的意義も大きい同社の今、そしてこれからを清水社長にお聞きしました。
株式会社フォー・ユー
代表取締役社長 清水 孝浩 氏
1990年 神奈川大学経済学部卒業後、株式会社近畿日本ツーリスト入社
2000年 株式会社フォー・ユー入社
2000年 有限会社サンクル設立
2002年 同社を株式会社に改組、代表取締役社長
2002年 株式会社フォー・ユー取締役
2002年 株式会社エフ・ワイ関東代表取締役社長
(2004年4月 株式会社サンクルに吸収合併)
(2006年7月 株式会社フォー・ユーに吸収合併)
2006年 株式会社フォー・ユー代表取締役、現任
インターウォーズ株式会社
インタビュアー 抜田 誠司
食品メーカーを経て、黎明期の外食FC本部に参画。研修・業態開発・営業企画等の責任者を歴任。その後、小売業等の新業態開発・外食業態のリブランディング・物流/購買改善等のプロジェクトに携わり、2007年から現職。
抜田 誠司(以下、抜田):清水社長が、昨年7月に「株式会社フォー・ユー」の代表になるまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
清水 孝浩 氏(以下、清水):はい。大学卒業して、旅行会社に入りました。仕事も楽しかったし、それなりのポジションも収入もあった。居心地もよかったですね。でも、親戚関係8家族中、7家族が経営に関わっているという家庭環境もあって、昔から自分で何かをしたかったんです。経営をしてみたかった。10年くらい経って、30歳を過ぎたくらいから、その気持ちが強くなって、それで当時独立・開業・起業支援の雑誌を見ていたら、「フォー・ユー」が運営していた「ブックマーケット」という業態の「独立支援制度」(フォー・ユーが債務保証する形の独立支援制度)の記事があって、それに応募したんです。
「フォー・ユー」に入社後、九州の副部長を経験し、当時店舗の無かった北海道エリアの立上責任者を任されました。その後、自分の立ち上げた北海道エリアの4店舗を買い取る形で、有限会社で独立しました。
当時、北海道では他社の古本業態が結構あって、飽和状態気味、市場規模もそれほど大きくならないと思って、私はそれまで細々とやっていた「2nd STREET」(総合リサイクルショップ:以下「2nd」)を強くしていかないと、北海道で生き抜いていくことが難しいと思って、「2nd」を強化していました。すると、北海道の数字が上がってきて・・・。そこで、競合の多い古本業態よりも、競合の少ない総合リサイクルの業態で行こうと決めました。
実は当時「フォー・ユー」グループは元の「ブックマーケット」という業態に傾注していて、「2nd 」はスクラップする方向だったんですけど(笑)、私が関東の会社を引き受けるときに、自分の会社は「2nd」で行くと話しをしたんです。そして、徐々に会社の業績が上がっていって、フォー・ユー本体も、全国展開を「2nd」中心で行こうということになり、それまでの古本事業や飲食事業は他社に事業売却したんです。
そんなこんなあって、先代の創業社長から、フォー・ユー社長就任の打診をいただき、社長をお受けしました。
抜田:なるほど。8つの会社を統合して、一つにして現在の形にしたとお聞きしましたがその時の苦労話を教えてください。
清水:変な話ですが、社長就任は責任感で受けてしまったんです(笑)。「2nd STREET」は自分の意見で展開が進んでいきましたので、この業態を全国展開していくことに責任を感じていました。でも、チャンスのある業態だって思っていましたし、この業態を日本一にしたかったんです。日本一に。
ここだけの話、正直収入も下がったんですよ。自分の会社は利益が出ていましたので(笑)。8人の創業社長がいるということは、社風も評価制度も店舗オペーレションも違うということなんですよね。指示をしても、それが伝わらない。その通り動いてくれない。反対が7割でしたね(笑)。他には、事業売却をするに当たって、売却先に転籍するか、「フォー・ユー」に残るか等、その業務を担当している社員の皆に辛い思いをさせてしまったり・・・。
本当に色々あって、時間はかかりましたが、徐々に徐々に、今は何とかやっと形になってきました。
抜田:御社の目指しているところは?
清水:長期的には、格好良く言えば、社会・消費者に使っていないものを有効活用するために「捨てる」という行為から「売る」という行為に習慣をつけてもらうことです。そうすることで、市場全体も拡大しますし、皆がハッピーになると思うんです。そのような風潮を作りたいと思います。それは「近くにあって」「気軽に行けて」「そこに売って大丈夫なのか。つまり信頼できるのか」の3つが揃ってはじめて成立すると考えています。
ですので、認知度・利便性を上げるためにも店舗数は必要ですし、リサイクル品をリサイクル品に見せないような売り方、買いやすい売り場や環境を作ることが重要だと考えています。
それと、東証一部を目指して行きたいと思っています。
抜田:現在の御社の課題は何だとお考えですか?
清水:業界全体で言うと、中古品の認定制度などは徐々に徐々にですが、整いつつありますしかしながら、まだまだ足りないと思っています。ですので、引き続き、行政への働きかけやマスコミやメディアに取り上げられるためにも、中古品の概念やイメージを変えるような動きが必要だと思っています。
会社としては人材教育ですね。
チェーン展開を前提にしていますので、真贋問題や査定(値付け)対策として、商品知識を従業員にどのように教育していくかがポイントだと思っています。商品に型番がなく、単純にマニュアルになりにくいもので、商品知識のある人を育ててはじめて、店舗を出店できる業態なんです。
だから、社員が一人前になるための教育期間をどのように縮めることができるかがこれからの課題です。
抜田:同業他社との差別化の要因は何ですか?
清水:売り方のテクニックです。詳細は教えられませんけどね(笑)。我々は服飾系に強みを持っていて、家電系から来たリサイクルチェーンは服飾系に来ても、うまくいかないはずなんです。服飾系から家電系リサイクルには比較的行きやすいんです。これがヒントです。
抜田:大変申し訳ないのですが、「リサイクルショップ」という言葉にいいイメージを持っていない人が少なくないと思うのですが・・・
清水:そうですよね。市場調査を取ると、リサイクルに興味のある人は全体の70%なんです。でも、実際にリサイクルショップに行ったことのある人は、70%を100とした時の20%なんです。その中で、ものを売ったことがある人はそのうちの13%っていうくらい、まだまだ浸透してないですし、イメージがよくないんです。
年代別に見ると、20代の方ほどリサイクルショップに行ったことある人が多いんです。逆に40代50代の人ほど、行ったことがない、興味がないという結果です。
時間が経つにつれて、若い人たちが歳を重ねると、リサイクルショップに対する偏見が少ない人達が増えてくる。ということは市場が大きくなるということになるんです。だから、業界のイメージアップのためにも「汚い」「暗い」「うさんくさい」とかっていう「リサイクル」のイメージの負の要素を取り除くのも、我々の大きな役目だと思っています。
抜田:清水社長が経営をされていく上で大事にしていることを教えていただけますか?
清水:社員の皆に考えてもらうことですね。指示で動くのではなく、自分たちの発想で動いてほしいと思っています。正直、待つのって辛いんですけど、考えるようになってもらわないと、すべてがマニュアル化できるわけではないので、一人ひとりが考えられる人材でなければ企業としても成長できなくなってしまう。だから、皆に考えてもらうんです。
抜田:御社の社風は?
清水:平均年齢は30歳前後で、自由だと思いますよ。さっきも話ましたが、上にものが言えないとか、考えることをやめてしまうということがないように気をつけていますので、強制的に動かされている人は少ないと思いますよ。ちなみに来客がある時以外は私も含め、私服ですしね。
抜田:御社で求める人物像はどのような方ですか?
清水:店舗系であれば、人を動かすことができる人ですね。つまり、協調性があって、且つリーダーシップがある人です。経営幹部層としては、会社全体を見る視野を持っていること。また、どこのポジションでも言えるのは、正直うちにはまだまだ経験が足りない部分があるので、店舗・管理系の職種問わず、チェーンオペレーション経験者であること。 心持ち的には「向上心」のある人です。一緒に『東証一部に行こう』と本気で目指していけるような人と一緒にお仕事したいと思っています。
抜田:最後に、現在、転職をお考えの方へアドバイスをお願いします。
清水:結局、自分に対しての動機づけだと思うんです。世の中や他人の意見に流されず、自分自身が本当に何をやりたいかをしっかり考えた上で、行動するといいと思います。僕も独立する時は、正直、自信もなかったですし、怖かったんです。でも、自分が独立したいと思ってるのに、行動に移していない自分が許せなかった。だから、「独立する」って決めて、旅行会社を辞めたんです。もし、自分が思っていても、諦められるような性格だったら、まだ旅行会社にいたかもしれませんけどね(笑)。
抜田:本日はありがとうございました。
清水社長は、物静かな口調の中にも、大変強い信念、いや「執念」のようなものを感じられる、言葉に嘘のない実直な方でした。
また、会社の雰囲気も大変よく、私が訪問時、道に迷った際も社員の方が非常に丁寧に電話で道案内していただき、その上、入り口で出迎えていただきました。
魅力的な清水社長が率い、ホスピタリティあふれる社員の皆様が支える同社の快進撃が見られると思うと、非常に楽しみです。