library

ライブラリ-
TOP ライブラリー クライアントインタビュー トップインタビュー 株式会社イントランス 代表取締役社長 上島 規男 氏

トップインタビュー

株式会社イントランス 代表取締役社長 上島 規男 氏

「ハンドメイド型不動産再生事業」を手がける「株式会社イントランス」の上島規男社長にお話を伺いました。
バブル崩壊後の不動産業界の低迷の中で起業し、「ハンドメイド型不動産再生事業」という独自のビジネスモデルにより逆境を乗り切り創業わずか8年で東証マザーズに上場されました。厳しい環境が続く昨今の不動産業界の中「再生」というキーワードで独自の存在意義を訴え続けるその熱い思いと戦略をお聞きしました。

株式会社イントランス

代表取締役社長 上島 規男

1989年4月 第一不動産株式会社入社
1991年4月 株式会社第一コーポレーション入社
1995年4月 第一不動産株式会社入社
1998年5月 当社設立 代表取締役就任

インターフォーズ株式会社

インターウォーズ株式会社

一人ひとりが人生のCEOとして生きる社会を実現する
人と企業のインキュベーター

インターウォーズ(以下、IWまず初めにイントランス社の事業の特徴について簡単にご説明いただけますでしょうか。

上島 規男 氏(以下、上島):はい。当社では、主に都内23区の商業ビル、オフィスビル、レジデンス等で、物件価格3億~20億の中古物件を対象とした不動産再生事業を営んでおります。わかりやすく言うと、不良債権処理、企業の資産リストラ、所有者の経済的理由等で市場に放出された物件及び当社が直接アプローチをした不動産所有者が保有する物件を対象に、当社の再生手法によって不動産の価値を高めることが可能と判断される物件について自己勘定により取得し、エリアの特性やニーズに合わせた再生プランを策定、若しくは実施の上、購入を希望される投資家等に対して販売しております。

IW:ありがとうございます。事業の特徴として「ハンドメイド型不動産再生事業」を掲げられていますが、どうしてこの事業手法をとられているのですか。

上島私が大卒後不動産会社に就職し、不動産事業に接していたことがひとつの理由です。私自身、バブル崩壊での不良債権回収で非常に苦労した経験があり、不動産に向き合っていかにして不動産の価値をあげるかを常に念頭に置いて仕事をしてきました。一つ一つの不動産物件の個性に合ったやり方、つまりハンドメイド型の不動産活用を不動産会社の社員時代から手がけてきたわけです。これが当社の再生事業のベースとなっていると思います。

イントランスを創業するに当たり、まずは一人でできる不動産仲介の仕事から始めました。次にビルを買って売るという事業を手がけましたが、最初から再生事業を意識して始めたわけではありません。会社の規模もそれほど大きくなく、また多くの資金があったわけではないので、大型のきれいなビルを手がけるだけの体力がありませんでした。結果として古い中古のビルを買ってフルリフォームを施して売るという形をとらざるを得なかった、これが再生事業の原点です。

イントランスのハンドメイド型不動産再生事業とは、はじめから作りこんだビジネスモデルではなく当社の事業を推進する中で派生的に生まれたビジネスモデルなのです。

IW不動産再生事業ということで、この再生方法にイントランス社の最大の強みがあると思いますが、具体的にどのような再生の手法があるのですか。

上島大きく分けると、大掛かりなコンバージョンやリニューアルと、エントランスなどの一部のリフォームなどの場合の2つのパターンがあります。

特徴的な事例としては、賃貸マンションを1棟まるごと購入し、区分所有登記に変えて分譲マンションとして1戸1戸販売する(賃貸から分譲へコンバージョン)手法があります。また、ある企業が本社や支社として所有していた物件を購入し、外装・内装などを本格的に全面リフォームし、インテリジェントビルとして再生したケースもあります。

IW外装、内装など見た目を美しくリフォームする手法が多いのですか。

上島外装などのリフォームは物件の使用前使用後のバリューアップの違いが比較的わかりやすいのですが、実際のバリューアップの手法で多いのは、例えば屋上の防水処理を施すなど設備関係の手直しをするケースが多いです。個人のオーナーさんの所有物件であまり設備メンテナンスに手が回らず設備の老朽化により物件の価値が下がっている場合、これを購入して設備をリニューアルして価値を上げるケースが多いです。

IWホームページを拝見すると自販機を設置する、リーシングをするなどの手法もあるようですが。

上島はい。自販機の設置の場合は、当社のかなり初期のころ取り組み始めた手法で(今でも取り組んでいますが)、その他には携帯電話の基地局を誘致したり、テナントと賃料増額交渉し物件から生み出されるキャッシュフローを改善し価値を上げる方法もとっています。

IWどんな物件でも貴社のバリューアップの手法で物件価値が上がるのですか。

上島必ずしもすべての物件で価値が上がるかというとそうでもありません。
一般的に不動産の売買で利益を得るには2通りの方法があります。ひとつは世間相場より安く買って、相場の価格で売るとこの差額が利益となります。これは人脈とか情報収集力などで有利な購入をして利益を売る方法です。もうひとつは中古物件を世間相場で(相場より割安な場合もありますが)購入して、そこに手直しを施したりキャッシュフローを高めたりし物件の価値を上げてより高く売る方法です。当社の再生事業はこの後者のやり方です。
インフレなどの不動産物件が値上がりしている時期では相場で買っても時間がたつと価格が上がり高く売れる場合もありましたが今はそうではありません。例えば、満室のビルなどを相場で買ってそのまま相場で売るようなことをしても利益は出ません。

当社の存在意義は、オリジナルの所有者の方が何らかの理由で(不良債権化、物件劣化など)物件を手放す際にビジネスチャンスがあると思っています。不動産会社がすでに購入してリニューアルなど手を入れた後の物件を扱っても当社の存在価値は少ないと思っています。何か理由があってオーナーが手放す物件をよみがえらせて価値を上げるこの「ひと手間」に再生事業者としての存在価値があると思うのです。我々が享受する利益はこの「ひと手間」にこそあります。これが商売の基本です。

例えば、あるオーナーが所有するビルに一度に空室が出て、それを機に売ってしまいましょうと考えられた場合、我々の「ひと手間」とは借主を見つけてその空室を埋めることです。空室を埋めることでこの物件の生み出すキャッシュが増えて価値が上がるのです。

私は世の中のビジネスは全て同じプロセスで動いると考えています。製造業であれば原材料を仕入れて工場で加工して販売する、また小売業であれば問屋から商品を仕入れてさまざまな陳列・販促手法を施して販売する、どのビジネスも付加価値をつけて提供しておりここに利益の源があります。我々のビジネスも不動産を購入してそこに「ひと手間」をかけて付加価値をつけて提供しているのです。この「ひと手間」にイントランスの商売そのものがあるのです。

IW不動産物件の取得についてはオリジナルの所有者に限定しているようですが、何か理由があるのですか。

上島購入先に関しては今までもともとの物件のオーナーさんなどオリジナルの所有者様から購入させていただくことに限定していました。なぜなら不動産会社所有の物件だと、当社が購入した後、(ひと手間)を加えることのできる物件が少なく、利幅も小さくなるケ-スが多かったためです。しかしながら、今の厳しい市場環境の元では不動産会社やファンドの所有している物件の中にも価格に柔軟性がある物件が増え始めており、弊社の仕入にとってはチャンスかもしれません。

IW不動産業界は昨今のサブプライム問題で非常に厳しい環境におかれていると思いますが、このサブプライム問題は貴社の事業に何かしらの影響を及ぼしていますか。またこの時期を乗り切るために貴社としての対策は何か講じてらっしゃいますか。

サブプライム問題以降は不動産投資に投資家の資金が回らなくなり、当社も売却先(買い手)が以前より見つけにくくなってきています。ここしばらくは忍耐の時期だと思います。一方で新規購入する物件については手放す方も増えており価格も下がってきて購入する側としては有利になってきています。当社は不動産会社の中でも所有する物件在庫とか借入金が比較的少ないので新しい物件を購入するための資金(融資)を確保しやすい財務状況になっています。よってまだまだ新しい優良な物件を積極的に買ってゆくチャンスの時期だとも感じています。

いかに物件価値を上げるかが御社のビジネスモデルとして非常に重要だと思いますが、どのようにしてバリューアップの手法、ノウハウを社内で蓄積しているのですか。

上島ノウハウと断言できるほどきちんとした手法を蓄積している訳ではありません。現状はそれぞれの物件の担当者各人がいかに物件の価値を上げるかを考えて投資委員会(会議)にかけて検討します。正直申しまして各担当個人の力量に依存した属人的なノウハウになってしまっています。ここが現在の課題で、誰でもできる社内共有ノウハウという形で蓄積してゆかなければならないと考えています。当社はハンドメイド型不動産再生事業をかかげており、パターン化した画一的な再生方法をとっていません。

私は不動産は人と同じで世の中に同じものはひとつもないと考えています。人を育成する場合、その人の長所、短所を見つけてよいところを伸ばし、弱いところをカバーする必要があります。不動産物件の場合も、その物件の良さを見い出し、併せて弱い部分を補修してゆく個々のケアが必要です。この個々の物件に合わせたハンドメイド型の再生手法が当社の強みであり投資家の皆様の評価を頂いている点なのですが、一方で各物件ごとに個別である再生方法をノウハウとして蓄積しにくい悩みもあります。

IWそうすると今までの社員各人を主とした会社運営から、より企業としての組織を意識した経営に転換することが必要な時期だとお考えなのですね。

上島はい、今後は組織をより意識して会社経営をしてゆかなければならないと考えています。
トップダウンで声の届く範囲での会社規模で経営を行うのもひとつの方法であり、より効率的に利益を得ることができるかもしれませんが、この方法だといつまでたっても私(社長)が全てを判断しなければならず会社としての規模の拡大は限界があります。上場会社として会社を成長させる使命を担っている以上組織として機能させなければならないと思います。また、万が一急に私が倒れてしまった場合にも社員が混乱しないように指示命令系統を組織化しておかなければならないとも思っています。

IW上島社長は将来イントランス社をどのような会社にしたいとお考えですか。

上島ここ2~3年はもう一回業績を立て直したいです。そして東証一部を目指します。中長期的にはイントランスとしての独自の存在意義を不動産業界で確立したいです。不動産業界は独自性を出しにくい、差別化しにくい業界なのでイントランス社としての当社の存在意義をきちんと確立して行かねばならないと常に考えています。それには「再生」というキーワードにこだわって事業を行ってゆきたいと考えています。それが将来都市開発なのかリゾートの再生になるのか、または公共施設の再生事業になるかもしれませんが、「ハンドメイド型の不動産再生事業」は今後も当社の独自性として訴求してゆきたいテーマです。

業績を上げるのも重要な使命ですが、何を目指している会社なのかを世の中に訴えてゆくことも非常に重要なことだと思います。

IW先ほど組織を意識した経営に転換することが必要な時期だというお話がありましたが、組織作りの課題は何ですか。

上島部門でいうと営業部門の強化が必要です。若い営業マンを引っ張ってゆく力のある営業マネジャーを必要としています。

IWそうですか。上島社長は営業マネジャーに対してどのようなことを期待しますか。

上島もちろん営業成績そのものも実績を上げていただきたいのですが、中間管理職として社員のモチベーションを維持する役割を是非とも担っていただきたいと思います。創業者としてまた社長として社員の心に火をつけてモチベーションを上げさせることは私の役割だと思っています。しかし一度燃え上がったモチベーションの火を絶やさないように日々維持させるのは私一人ではできません。日々社員と接する中で社員のモチベーションを絶やさないように維持する役目を中間管理職であるマネジャーの方に期待しています。

IWどんな経歴の方がイントランス社の営業マネジャーとして活躍できますか。

上島不動産業界の経験のある方であれば比較的即戦力として活躍できるでしょう。しかし、重視したいのは経験よりも意欲(ハート)と営業のセンスです。異業種からの転職例だと証券会社の営業経験のある社員が当社でおおいに活躍しているケースもあります。

IW貴社の場合、不動産の取得、バリューアップ、投資家等への販売までを一貫して1人の営業担当者が行うことを特徴とし、なかなか難易度の高い仕事だと思いますが。

上島一人ですべての役目をこなすのは初めは難しいです。物件取得についてはチームで物件会議を開いて意見を出し合い、また再生方法・販売先を決定する際にもチーム(部単位)で相談しながら決めてゆきます。ゆえに経験よりも意欲(ハート)や新しいことを修得できるセンスが重視される訳です。

IW転職者の方がイントランス社を選び入社するメリットはどんなところでしょうか。

上島当社はまだまだ成長途上の会社なのでポジションはいっぱいありますし、その気があればキャリアアップのチャンスは幾らでもあります。もっといえば役員になる可能性もあります。力のある方で、実績を出していただくことができるのであれば年収面でも役員以上の金額を得ることも可能ですし、そうすることも実際に考えています。

IW最後にこのインタビューを読まれている方へメッセージをお願いします。

上島「隣の芝生は青い」と思わないほうが良いと思います。転職して成功するも失敗するも全て自分次第です。ご自身がいかに仕事に取り組むかを常に考えて、あまり周りや他人に振り回されないで自分自身をしっかり持って選択をしていただきたいと思います。

IW本日はありがとうございました。

不動産物件一つ一つの個性を大切にし、丹念に再生してゆくことを身上とされる上島社長の思いが伝わるインタビューでした。組織力を強化しなければならないという明確な方針のもと、今後イントランス社が不動産業界で独自の地位を築けるよう当社も応援してゆきたいと思います。