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株式会社フェイス・ワンダーワークス 代表取締役社長 社長執行役員 吉田 眞市 氏
ITサービスのフェイス社(東証一部)の戦略子会社で、エンターテインメント領域で新しい価値を提供している株式会社フェイス・ワンダワークスの吉田眞市社長にお話を伺いました。
2009年4月、コンテンツの企画・開発・配信の「ギガネットワークス株式会社」と、映画・映像の企画・プロデュース・製作・宣伝の「株式会社デスペラード」が経営統合し、「株式会社フェイス・ワンダワークス」として新たにスタートを切りました。マルチコンテンツ化、マルチプラットフォーム化が進むエンターテイメント業界において、今までにない「喜び!」と「感動!」をもたらす新しいライフスタイルを提案する企業を目指しています。
2009年1月にフェイスグループに参画され、4月にフェイス・ワンダワークス社の社長に就任された吉田社長に同社の今と未来についてお聞きしました。
株式会社フェイス・ワンダーワークス
代表取締役社長 吉田 眞市 氏
1991年3月 慶応義塾大学卒業
1991年4月 伊藤忠商事株式会社
2003年1月 株式会社ブロッコリー 取締役
2004年5月 同社常務取締役
2005年5月 同社代表取締役社長
2007年6月 株式会社磐梯インベストメンツ ディレクター
2009年1月 株式会社フェイス 上席執行役員
2009年4月 株式会社フェイス・ワンダーワークス 代表取締役
インターウォーズ株式会社
インタビュアー 片原 和明
情報産業大手企業にて社会人デビュー、経理・経営企画・総務・法務・人事と新規事業開発に深く経験。その後、外資系生保会社にて個人・法人営業・マネジメント経験を経て現職。
片原 和明(以下、片原):吉田さんがフェイス・ワンダワークスに参画しようと意思決定された背景はどのようなものだったのでしょうか?
榊 真二 氏(以下、榊)参画したのが2009年1月からですから、もう7ヶ月経ったことになります。
参画する前には、「今後何をやるか」ということを考えましたが、それ以上に「誰とやるか」ということを重要視して考えていていました。フェイスグループのトップの平澤とは私がブロッコリー社(アニメ・ゲームの企画・制作と小売チェーン運営会社)時代からお付き合いさせて頂いていて、とても信頼できる人だという事がわかっていましたし、信頼感のある人達と仕事をするのは楽しく、苦労も一緒に乗り越えていけると思いました。
平澤以外にも取締役や幹部の方とお会いしましたが、チームを作っていくにあたり、やりがいのある人達だと感じました。ビジネスの中身としては、「エンターテイメントの領域で、ITを駆使して真新しいものを作っていこう」という社風が良いと思いました。
グループ全体もこれから第二創業というタイミングでした。着メロという単一ビジネスで一気に東証一部企業になりましたが、「その次に何をやるのか」、「電子マネー事業が1つあるけど、これからどうするのか」という時期に今あって、その中で私が貢献できる部分が非常に大きいのではないかと考えて、参画しようと思いました。
片原:フェイス本体の平澤代表は、吉田さんの参画に対し、どの点を期待されたのでしょうか?
榊:エンターテイメントというカテゴリーでの経験とスキルになるかと思います。平澤曰く、「社長という役割を担ってきた経験が大きい」と。フェイスにはマネジメントや経営という経験のある人が少なかったので、この点を期待されたのだと思います。グループの戦略を考えたり、M&Aを仕掛けたり、経営の部分だけではなく、ファンドや、商社での経験も期待されているのだと思います。自分でもそれが役割、責任だと意識していますし、自分の武器だと思っています。
片原:(2009年4月に)ギガネットワークスとデスペラードを合体させて新体制にしたのは何故なのでしょうか?
榊:エンターテイメントのビジネスは競争もすごく激しく、時間の流れもすごく速い。それに対応していくには【小さい船】よりも【大きな船】でと考えました。物理的には近くにいても、屋根が違うと色々弊害も出てきますので、「一つ屋根の下に集ってビジネスを回していこう」、と考えました。
(ギガネットワークスが行っている)配信というのは携帯を介した小売ビジネスです。(デスペラードが行っている)映画の事業は、まさに企画をするところから入っていくので、コンテンツでいうと川上の部分から入っていく事になります。単純にいうとその川上の部分と川下の部分をより密接にリンクさせることによって、エンターテイメントというマーケットを【面】で捉えようと考えました。
自ら企画・プロデュースした作品を、自ら携帯やインターネットで配信していく出口を持つことによって、映画ビジネスの流通構造を変えていきたいという想いがあります。
今後の方向としてはこれらをもっと拡充していき、マルチコンテンツ化、マルチプラットフォーム化を実現していきたい。メディカル分野、生活に関わる分野などもコンテンツのカテゴリーとして拡充していこうと考えています。自前で出来るところとパートナー企業を必要とするところと、色々出てきます。大目標に向かって、自分達だけで出来ることは限られているので、今後パートナーが必要になると思いますし、M&Aをする時が来るかもしれないですね。
片原:ここで確認なのですが、「ユーザーは誰」になるのでしょうか?貴社が向き合っていくのはBtoBの法人で、仕組み作りに関して向き合うのか、それとも個人に対して向き合い、課金モデルでの収益構造となるのでしょうか。
榊:グループでいうと、両方ということになります。親会社であるフェイスはBtoBの仕組みを売っていく立ち位置が中心です。ワンダワークスはユーザー寄りのBtoCのビジネスで、エンターテイメントのコンテンツなどのビジネス展開が中心となります。その展開の仕組みをフェイスが提供していきます。企業やサービサーの方達に仕組みを提供するのがフェイスで、コンテンツを考え、ユーザー向けに発信していくのがワンダワークスということになります。
片原:HPの中にも【感動】という言葉が多く書かれていますが、感動の次に来る具体的なシーンとはどのようなものでしょうか?
榊:実は何でもいいと思っています。要はインプレッション、というか、心に残るもの。「嬉しい」だったり、「悲しい」だったり、「楽しい」だったり、色々な感情があると思いますが、いずれにしてもそれに触れた人たちの印象に残る、心に残ればいいなと思っています。映画や音楽、それらによる感情は喜怒哀楽のどの形でもいいと思っています。
片原:吉田さんがベンチマークされているものはどのようなものでしょうか?コンテンツも仕組みも含め「この国のこんな感動シーンのこんなモデルで…」というようなものはありますか。
榊:基本的にはあまり意識していないですね。目指しているのは「どこもやっていないこと」、です。既にあるようなビジネスモデルは、素晴らしいサービスだとは思いますが、そこに「右へならえ」ではなく、「新しい仕組みとして作り上げること」が使命だと思っています。あえてベンチマークというのはグループとしては持っていませんし、私自身としても持っていません。
ただ、参考にしなくてはならないのは、時代の流れです。インターネットや携帯等がメディアとして発達し、ユーザー自身が発信するような機会が増えてきており、ユーザーとクリエイターの境目がなくなってきています。デバイスも境目が緩くなってくるというか、「使う側が意識しないようになるだろう」と感じています。こうした流れはすごく参考にしています。
片原:マルチコンテンツ化が進んでいる中で、今後の進め方は如何でしょうか?ネットワークを作っていくことや、顧客を抱え込んでのファン作りということが貴社にとって重要な局面になると思いますが、具体的に計画されていることはあるのでしょうか?
榊:一つは映画祭のようなイベントに協賛していき、リアルな場を活用した「クリエーター、ユーザーの中でのコミュニティ」を私たちが創っていけたらと考えています。まだまだ考えている段階ですが、リアル店舗やリアル店舗を持っている企業と提携していくなどの動きも積極的にやっていくことになると思います。【集客】ということで情報を携帯に配信するだけではなく、お店に来ないと得られない情報などを発信する仕組み等ができたらと考えています。ユーザーが楽しめるような仕組み、ビジネスを提供したいですね。
これまでなかった取り組みで言うと【ショートショートフィルムフェスティバル】という映画祭に協同事業として一つの新しい部門を立ち上げています。
映画祭としては業界初だと思います。ミュージックショート部門という部門名です。要は音楽レコード会社などからオフィシャルに楽曲を提供してもらい、100曲を超える楽曲を課題曲として用意します。プロ・アマチュア問わず映像クリエイターが好きな曲を選んで、その曲の世界観やストーリーを自由に映像として表現していく。制作された映像作品を映画祭のコンペに応募してきて頂くという仕組みです。業態や形は問わずに応募してもらい、映画祭でコンペをやります。最優秀の作品に対しては賞金以外にも企業支援をしていこうだとか、映画プロデューサーの下、映画を作ってもらおうとか、そんなことをやっていこうと思っています。
映画自体も売れる、売れないがはっきりしてきています。中々、世の中に出てくることができない映像系のクリエイターに活躍の場所を提供していこう、という取り組みになります。スキームもゼロから、ビジネスとしてもゼロから創っているので中長期的に考えています。文化としても根付いてくれたらいいなと思っています。
片原:近未来的にフェイス・ワンダワークスはどんな人たちの集合体にしていきたいですか?
榊:一言でいうと「楽しんでいる人たちの集団」であってほしいと思っています。
仕事なので困難なこともあると思いますが、それもひっくるめてビジネスとして楽しんでいる人たちの集団でいて欲しいです。新しいものを生んでいくので「失敗しても前向きに倒れていける人」、マーケットを切り開いていくので、「新しいものを自ら考えて自ら動いていける人」が一人でも多くいてほしいですね。
片原:今現在、あえて上げるとすれば、優先課題はどのようなことでしょうか?
榊:「【新しいものをどうやって作りだすか】という経験値をどれだけ中に蓄えられるか」だと思っています。実際どれだけ立ちあがってくるかと考えると、まだまだ経営サイドからすると、足りないです。既存の事業に時間をとられてしまっている部分もあるでしょうし、新しいものを生み出すという事が組織に沁み付いていないということもあるかと思います。それを浸透させるのが課題です。Try & Errorを繰り返すということを、ノウハウとして身につけるということが課題でしょうか。
片原:貴社への参画を考えている方々へのメッセージをお願いします。
榊:系列などのしがらみがないので事業のフィールドを大きく考えられると思います。色々なビジネスを展開できる会社です。「新しいものをつくること」が会社としての使命でもあるので、「何か自分で新しいものを作ってみたい!」という意識のある人たちにとってはこれ以上ないくらいの良い環境だと思います。【0→1】で創っていける人にはかなり良い環境だと思います。チームで業務を行うので、「なんでも一人でやってね」というわけではないですが、自己責任で動いてほしいです。
全社で40名、平均年齢は36歳くらいですが、一番上で開発系の方で60歳の方もいます。
企画、運営チームや開発系のところでも、音の制作のところでも、企画は生まれてくる。みんなが企画、というイメージで、誰でも手を上げることができます。
しっかりと周囲とコミュニケーションをとって【協調】、自ら考えて提案・行動できる【自立】ような方のご参画を期待しています。
片原:本日はありがとうございました。
動きの速いエンターテイメント業界の中で、自社だけの利益ではなく、業界全体の利益や文化をも創っていこうと広い視野で考えておられる点にとても共感できました。気さくに丁寧にお話をされる吉田社長のお人柄からも、同社の自由闊達な雰囲気が窺えました。
今までにない価値を顧客と、パートナー企業と一緒に作り上げていく同社の今後の展開に向けて当社も今まで以上に応援させて頂きます。