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TOP ライブラリー クライアントインタビュー エグゼクティブインタビュー 鈴茂器工株式會社 経営企画部長 秋田 一徳 氏

エグゼクティブインタビュー

鈴茂器工株式會社 経営企画部長 秋田 一徳 氏

創業1961年、世界で初めて寿司ロボットの開発に成功し、今や、小型寿司ロボットでマーケットシェア約8割、
ご飯の盛り付ける機械で約9割を占める鈴茂器工社(https://www.suzumo.co.jp/)
昨今、「Food-Tech」「ロボティックス」「省人化・自動化」といったワードが注目される中、同社で経営企画部長を務める
秋田一徳氏にお話をお伺いしました。

経営企画部 部長 秋田 一徳 氏

鈴茂器工株式會社

経営企画部 部長 秋田 一徳 氏

大学卒業後、教育関連の事業会社を経て、製造業向け人材派遣ビジネスをメインに行う日本エイム社(現UTエイム社:UTグループ社の戦略事業会社の前身)に参画。法人営業・支店長・採用統括・子会社取締役を経て、経営企画/広報IR部門を担当。2011年より、UTホールディングス社(当時JASDAQ上場)の執行役員に就任し、経営企画(中期経営計画・M&A・経営管理等)・IR・広報・人事総務を管掌。2015年に鈴茂器工株式會社に入社し、2019年7月より、現職。

抜田 誠司

インターウォーズ株式会社

インタビュアー 抜田 誠司

食品メーカーを経て、黎明期の外食FC本部に参画。研修・業態開発・営業企画等の責任者を歴任。その後、小売業等の新業態開発・外食業態のリブランディング・物流/購買改善等のプロジェクトに携わり、2007年から現職。

抜田 誠司(以下、抜田)まず、秋田さんのご経歴を教えていただけますか。

秋田 一徳 氏(以下、秋田):鈴茂器工には2015年4月に入社しました。その前は、現在のUTグループという人材派遣会社で15~6年、前半は営業、後半は経営企画・社長室を担当しました。私の入社当時は、まだ上場しておらず、規模も非常に小さかったのですが、社長が非常に魅力的な方で、是非一緒に働いてみたいと思い入社しました。
私が入った1999年に改正派遣法が施行され、人材派遣が業界として立ち上がっていく時期で、新たな業界を作っていくところに面白味を感じていました。製造業派遣の業種の中で初めて上場した会社ということで、上場後は、経営企画や社長室など、コーポレート的な業務も担うようになり、色々な経験ができました。
振り返るととても楽しかったですし、勉強も成長もできて満足していましたが、今度は少し違うフェーズで、チャレンジをしたく、鈴茂器工に入社したという経緯です。

秋田 一徳 氏

抜田そうでしたか。現在は経営企画部長でいらっしゃいますが、管掌の範囲を教えていただけますか。

秋田経営企画課とマーケティング課を管掌しています。経営管理的なもの、予算管理、月次、子会社の管理ですね。あとはコーポレートコミュニケーション、主にIR、そしてビジネス系のメディアのコミュニケーション対応等です。昨年マネジメント体制が変わり新たな体制になったので、社外に初めて中期経営計画を発表しましたが、その戦略立案や戦略を実行する支援もしています。

抜田鈴茂器工社を選ばれた理由を教えていただけますか。

秋田鈴茂器工に限ったことではなく、いい意味で発展途上、成長途上の会社に行きたいと思っていました。前の会社は大きくない事務所から上場して、今では1000億円を超える時価総額になっていますが、自分のことを知っている人がいない、安定というよりもチャレンジしがいのある、自分が面白味を感じられる世界・業界でやりたいと考えました。

抜田なるほど。

秋田そんな中、鈴茂器工という会社を知りました。寿司ロボットを世界で初めて開発した会社で、マーケットシェアも非常に高い。それ以上に素晴らしいと思ったのは、食文化を変えてきたことです。 私が子供の頃はお寿司といえば、年に2・3回しか食べない、高嶺の花でしたが、今では毎日、気軽にどこでも誰でも食べられる。お寿司を大衆化した。そのように食文化自体を変えるというのは、なかなかできることではないと。

抜田運営している会社の努力だけでなく、それを支える方々(会社)がいなければ、ビジネスは成り立たないし、あの価格で我々の口に入らないということを考えると、とても大事な立ち位置ですね。

秋田はい。面白いのが、誰かに作って欲しいと言われて作ったものではなく、当社の創業者が、お米の文化やご飯を食べる場をもっと広げていきたいと思い立ち、始めたのです。
高嶺の花だったお寿司が日常的に食べられるようになれば、お米を食べる機会がもっと増えるだろうということで世界初の寿司ロボットを開発しました。 お寿司が広がって、多くの方々が口にする機会が増えたのは、寿司職人さんの努力はもちろんのこと、機械の存在も大きかったのではないかと思ったりしています。

秋田 一徳 氏

抜田これからは、会社の事を聞かせてください。先程、少し触れていただいた昨年発表の中期経営計画の件をもう少し詳しく教えていただけますか。

秋田はい。昨年、5年の中期経営計画を出し、ドメインを変えました。元々の当社のビジョンである「米飯主食文化を世界へ」から、「食の『おいしい』や「温かい』を世界の人々へ」としました。食というドメインで我々がどう事業を展開していくか、そして、これから世の中の価値観や暮らし方が変わるという前提で、今回の中期経営計画を策定しました。
計画の柱は3点で、①国内事業 ②海外事業 ③新規事業です。①の国内事業はシェアも高く、ある種安定していますが、一方で国内では成熟化を迎えている市場でもあるので、いかに違う市場を創造していくことができるかが重要で、そのためには、ブランディングがポイントと考えています。 次に、今の売上の約4分1を占める②の海外事業ですが、北米、アジア、ヨーロッパが大きな3つの柱になっています。現在は、極端にいうと、お問合せを頂いたところに販売をしているイメージで、新しい市場を創造していく余地がまだまだある。和食、米飯加工品の美味しさを認識してもらいながらマーケットを作って、機械が売れていくという世界をどのように作ることができるかがこれからのポイントだと思っています。

秋田 一徳 氏

最後に③の新規事業はまだ固めていませんが、テーマが3つあります。 1つ目は、米に限らないというところ。ただ食の領域というところは外さない。2つ目は、ハード以外の当社の隠れている価値を活かすというところ。具体的には、国内で言えば、米飯を扱っている外食、小売りのチェーン店はほぼお客様ですし、海外も80か国に販売していて、ネットワークは非常に広いものがある等です。3つ目は、今の世の中で当たり前の話なのですが、自社の技術、リソース、あるいはインフラなどを活用しながら、社外の企業とコラボレーションして、事業を作っていく。
この3つのポイントを見据えながら、事業を固めているところです。手段としてはもちろんM&Aもあると思います。ビジネスのやり方自体を変えていくような新規事業を5年後ぐらい先を見据えて、第2・第3の柱として作っておこうということです。

抜田競合企業というとどの会社になるのですか。

秋田いわゆるご飯を加工する、何らかの形にしたりとか、盛り付けたりという米飯加工機械を作っている競合は2社あります。1社は九州の企業さん。もう1社は、音響ヘッドホンメーカーさんの一事業部が寿司ロボットを作られています。

抜田貴社のメインである寿司ロボットでマーケットシェア8割、ご飯を盛り付ける機械で約9割とお聞きしました。

秋田米飯加工機械は大きく2種類に分かれていて、当社が得意としている外食店のキッチン、あるいはスーパーマーケットのバックヤードで使う小型の機械です。当社のシェアはそちらで非常に高く、一方、九州の企業さんは食品工場向けの大型機のシェアが高いです。例えば、コンビニエンスストアのおにぎりを作る工場向けの大きな機械等です。
また、丼チェーンでご飯を盛り付けるのにしゃもじを使っているところは今ありませんので、牛丼チェーン、カレーチェーン、天ぷらチェーン、かつ丼チェーンの多くは、弊社の機械でご飯を盛り付けています。

寿司ロボット

抜田なるほど。貴社のこだわりと教えてください。

秋田昨年新しく、当社のビジョンを「食の『おいしい』や『温かい』を世界の人々へ」と再定義しました。機械に求められるものは正確さや品質、当然安全ですが、やはり鈴茂器工が大事にするのは美味しさとか温かさ。ご飯を傷めずにふっくら整形するとか、盛り付けるとか、口に入れるお客様にいかに満足して食べていただけるかを重視しています。

抜田そのこだわりはなぜ実現できるのでしょうか。

秋田いろんな意味を含めた技術ですね。当社の機械でもセンサーを使いますが、やはり外食、スーパーマーケット等、それぞれの店舗で使われるものなので、あまり高価な機械だと使うことができない。そうすると、ある程度の価格で、しかも、しっかりとした品質と美味しさが保つことができる、そのバランスをどう保つかというところが一つの技術です。
大量のセンサーや、最新の部品を大量に使えば良いというわけではない、ある意味アナログの分野ですね。そういう意味では、最初に寿司ロボットを開発した歴史とノウハウ、あとお寿司を売っている会社さん・一般消費者の皆さん全てがお客様で、今までのお客様の声とそれに応えてきた蓄積、そういうものも含めた技術にはやはり一日の長があると思っています。

抜田最近の「Food-Tech」や「ロボティックス」「省人化や自動化」「衛生」という流れは御社にとって追い風になっているのではないでしょうか。

秋田そうですね、100億もいかない米飯加工の機械を作っている中堅企業で地味な会社なのですが、周りからは1次産業・2次産業・3次産業の真ん中にいる会社と認識していただいているようで、当社とは桁の違う大きな会社から、「一緒に何かやってもらえませんか」とお声掛けをいただくこともあります。素材を加工して、最終消費者の皆さんに提供し、小売業界、外食業界とも密接に繋がっている。
いいポジショニングにいて、色々なことをやっていける可能性が大いにあるので、非常に楽しみなところです。実際、現在進行形で進んでいるものもあります。

米飯加工機械

抜田最後に転職を考えていらっしゃる方に、メッセージやアドバイスをお願いできますか。

秋田私は転職してよかったと思っていますが、簡単に転職をするものではないとも思っています。ある意味それだけの考えがあり、腹を据えていなければ、次に活かせない。どこに行っても仕事は大変ですし、種類が違うという問題もありますし、馬が合う人ばかりではないかもしれません。
昨日まで隆々としていた業界が、次の日からは斜陽になることもありうる。そういういろいろなものがあるから、やはり腹は据えてやっていかなければならない。ただ腹を据えて、チャレンジ精神を持ってやっていくことで次のところで成果もあげられる。そこにやりがいのある世界が待っていのではないかなと思います。

秋田 一徳 氏

抜田秋田様 本日は誠にありがとうございました。